「建設業」「介護職」「運送業」…これらの職種に、どのようなイメージをお持ちでしょうか。多くの人が「きつい」「給料が安い」といったネガティブな印象を抱き、採用市場では「不人気職種」として扱われがちです。
しかし、そのイメージは本当に正しいのでしょうか? 給与などの待遇は、本当に他の業種と比べて見劣りするのでしょうか。本記事では、公的な統計データを基に、「不人気」とされる業種と「人気」業種のリアルな給与実態を比較分析。イメージと現実のギャップを明らかにし、採用難を乗り越えるための新たな視点と戦略を提示します。
人気・不人気を分けるもの – 給与は本当に決定的な要因か?
学生の就職人気ランキングでは、総合商社やIT・コンサルティング業界が常に上位を占める一方、生活に不可欠なサービスを提供する多くの業種が、残念ながら「不人気」と見なされています。その最大の理由は「給与が低い」というイメージです。では、実際のデータを見てみましょう。
【業種別】平均給与データ比較
国税庁の「民間給与実態統計調査(令和5年分)」によると、業種別の平均給与は以下のようになっています。一般的に「人気」「不人気」と分類される業種を比較してみましょう。
グラフを見ると、確かに「電気・ガス・水道」や「金融・保険」といったインフラ・金融系の人気業種は高い水準にあります。一方で、「建設業」の平均給与は519万円と、全産業平均の458万円を大きく上回っています。これは、専門技術を持つ人材への需要が高く、待遇が改善されていることを示唆しています。
また、「運輸業・郵便業」も全産業平均に近く、世間の「給与が低い」というイメージとは必ずしも一致しません。このことから、人気・不人気を分けているのは、単純な給与額だけではないことが分かります。
イメージの源泉 – なぜ「不人気」のレッテルが貼られるのか?
給与が平均以上であっても不人気とされる背景には、給与以外の「働き方」や「労働環境」に対する根強いイメージが存在します。
| 不人気とされる業種(例) | 人気とされる業種(例) |
|---|---|
持たれがちなイメージ
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持たれがちなイメージ
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実際の課題
労働力不足による一人あたりの業務負荷の増大や、DX化の遅れによる生産性の低さなど、構造的な問題を抱えている場合がある。 |
実際の課題
高い専門性や成果が求められ、競争が激しく、精神的なプレッシャーが大きい場合がある。 |
重要なのは、これらのイメージが過去のものであったり、一部の事例が全体像として誤解されていたりするケースです。例えば、建設業界では週休2日制の導入やICT技術を活用した生産性向上が急速に進んでいます。介護業界でも、処遇改善加算やキャリアアップ制度の整備により、待遇は年々改善されています。
採用成功への道筋 – 「知られていない魅力」をどう伝えるか
もし、自社の待遇が世間のイメージほど悪くない、あるいは実際には平均以上であるならば、それは採用活動における絶好のアピールポイントになります。採用成功の鍵は、「事実」を正しく、そして魅力的に伝えることです。
1. 給与の「見せ方」を工夫する
求人票にただ月給や年収を記載するだけでは不十分です。具体的なモデル年収を提示しましょう。
【改善例】
「月給28万円~」
→ 「【モデル年収】520万円/35歳・入社5年目(月給32万円+賞与+各種手当)」
年代や役職ごとの具体的な年収例を示すことで、求職者は将来のキャリアと収入を現実的にイメージできます。また、基本給だけでなく、賞与や手当、残業代を含めたリアルな総支給額を伝えることが信頼に繋がります。
2. 「働きやすさ」を数値で示す
「働きやすい環境です」という抽象的な言葉では、求職者の不安は払拭できません。「長時間労働」「休日が少ない」というイメージを覆すには、客観的なデータが必要です。
【アピールすべき数値データの例】
- 年間休日数:「年間休日120日以上」
- 平均残業時間:「月平均残業時間15時間」
- 有給休暇取得率:「有給取得率85%」
- 育児休業取得実績:「男性の育休取得実績あり」
これらの数値を具体的に示すことで、企業のクリーンな労務環境を証明し、求職者に安心感を与えることができます。
3. 「未来」と「成長」を語る
給与や休日も重要ですが、多くの求職者は「この会社で成長できるか」という視点を持っています。特に若手にとっては、キャリアパスの明確さが大きな魅力となります。
【伝えるべきこと】
- 研修制度・資格取得支援:どのようなスキルが身につくのか。会社が成長をどうサポートしてくれるのか。
- キャリアステップ:どのような経験を積めば、どのような役職やポジションに就けるのか。具体的なキャリアモデルを提示する。
- 業界の将来性:社会インフラを支える仕事の意義や、DX化によって業界がどう変わろうとしているのか、その中での自社の役割などを語る。
「不人気」はチャンス – イメージを覆し、選ばれる企業へ
「不人気職種」というレッテルは、多くの場合、古いイメージや情報不足から生まれる「誤解」です。もし自社の待遇や労働環境が世間のイメージと異なるのであれば、それは他社が気づいていない大きな採用チャンスを意味します。
まずは、自社の「事実」を客観的なデータで洗い出しましょう。そして、給与、休日、残業時間、キャリアパスといった具体的な情報を、求職者の不安を払拭する形で丁寧に伝えること。その地道な情報発信こそが、根強いイメージを覆し、採用競争を勝ち抜くための最も確実な近道となるはずです。

