「求人を出しても応募が来ない…」
「採用コストが予算を大きく超えてしまう…」
現代の採用市場は、多くの企業にとって厳しい現実を突きつけています。特に、特定の職種や業界では、人材の獲得が極めて困難になり、そのための費用も高騰の一途をたどっています。
本記事では、厚生労働省などの公的機関が公表する調査結果に基づき、採用難易度が高い、つまり「人が採れない」職種や業界、そして採用にかかるコストが高い職種・業界をランキング形式でご紹介します。なぜそのような事態が発生しているのか、その背景にある具体的な事実も深く掘り下げて解説します。
採用難易度とコストの現状
日本全体で少子高齢化が進み、労働力人口が減少する中で、多くの企業が人手不足感を訴えています。帝国データバンクの調査などによると、正社員の人手不足を感じる企業は過半数にのぼり、特に特定の職種や業界では深刻な状況です。
この人手不足は、求人広告のクリック単価(CPC)や人材紹介の成功報酬といった「採用コスト」の高騰にも直結しています。需給バランスが崩れることで、企業間の人材獲得競争が激化し、限られた人材を巡る費用は上昇の一途をたどっています。
採用難易度が高い職種・業界ランキング
厚生労働省の「職業安定業務統計」や各求人媒体のデータ傾向を総合すると、有効求人倍率が高く、人材の獲得が特に難しい職種・業界は以下の通りです。
順位 | 職種・業界カテゴリ | 有効求人倍率 (概算) |
主な背景・状況 |
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1位 | ITエンジニア(Web系開発/SaaS営業/データサイエンティストなど) | 8~10倍以上 |
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2位 | 医療・介護・福祉専門職(看護師/介護士/理学療法士など) | 3~5倍 |
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3位 | 建設・土木・建築技術者(施工管理/設計/現場作業員など) | 3~4倍 |
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4位 | 運輸・物流職(トラックドライバー/倉庫作業員/物流管理など) | 2~3倍 |
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5位 | サービス業(ホテルスタッフ/飲食店のホール・キッチン/販売員など) | 2~2.5倍 |
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6位 | 営業職(特に新規開拓/専門商材営業) | 1.5~2倍 |
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7位 | 製造業(生産ライン作業員/技術者) | 1.5~2倍 |
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8位 | 警備員・清掃員(施設警備/ビル清掃など) | 1.5~1.8倍 |
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9位 | 教育・学習支援業(塾講師/専門学校教員など) | 1.2~1.5倍 |
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10位 | 専門職(弁護士/税理士/公認会計士の若手など) | 1.2~1.5倍 |
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※出典:厚生労働省「職業安定業務統計」「有効求人倍率(職業別)」、各求人媒体公表データ、帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」など公的調査の一般的な傾向に基づき編集
これらの職種は、社会的な需要の高さ、専門性の要求、労働環境の特性などが複合的に絡み合い、人材が慢性的に不足している状態です。企業にとっては、従来の採用手法だけでは太刀打ちできない「採用の壁」が存在すると言えるでしょう。
採用コストが高い職種トップ10
採用難易度が高い職種は、必然的に採用コストも高くなる傾向にあります。特に人材紹介サービスや運用型広告(Indeed、求人ボックスなど)を利用した場合に顕著です。
順位 | 職種カテゴリ | 人材紹介費用 | 主な背景・状況 |
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1位 | ITエンジニア(特に高度なスキルを持つ層) | 180万~240万円 (例:年収600万円の場合) |
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2位 | 医療系専門職(医師、薬剤師、コメディカルなど) | 160万~280万円 (例:年収800万円の場合) |
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3位 | 経営・事業企画・管理職層(部長・GMクラス以上) | 350万~500万円 (例:年収1000万円の場合) |
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4位 | コンサルタント(戦略/IT/業務改善など) | 210万~280万円 (例:年収700万円の場合) |
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5位 | 研究開発・R&D職(特定の専門分野) | 162.5万~227.5万円 (例:年収650万円の場合) |
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6位 | 金融専門職(ファンドマネージャー/アナリスト/M&Aなど) | 280万~400万円 (例:年収800万円の場合) |
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7位 | 法務・知財(弁護士/弁理士/企業法務) | 175万~280万円 (例:年収700万円の場合) |
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8位 | デジタルマーケティング(デジタルマーケター/グロースハッカー) | 137.5万~192.5万円 (例:年収550万円の場合) |
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9位 | 海外事業開発・国際営業 | 180万~240万円 (例:年収600万円の場合) |
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10位 | 製造業の技術開発職(特定の専門分野/希少技術) | 145万~203万円 (例:年収580万円の場合) |
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これらの職種は、専門性や希少性が高いため、プロのサポート(人材紹介やヘッドハンティング)が必要となることが多く、結果的に採用単価が高額になる傾向があります。運用型広告の場合も、競合の多さからクリック単価が高騰し、総費用が膨らみやすいです。
なぜ採用は難しく、コストがかかるのか?
採用難易度とコストの高騰には、複数の要因が複合的に絡み合っています。
採用難・高コスト化の背景
これらの要因が複雑に絡み合い、企業は「人が採れない」「費用がかかる」という二重苦に直面しているのです。
採用難・高コスト職種/業界を乗り越える戦略
採用難易度が高く、コストがかかる職種や業界でも、戦略的なアプローチで成果を出すことは可能です。
効果的な採用戦略のポイント
まとめ:データに基づき、戦略的に採用を
採用難易度とコストのランキングは、日本市場の厳しい現実を浮き彫りにしています。しかし、これらのデータは、単なる「課題」を示すだけでなく、企業がどこに注力すべきか、どのような戦略が必要かを教えてくれる羅針盤でもあります。
自社の採用課題を正確に把握し、多角的なアプローチすることで、たとえ採用難易度が高い職種や業界であっても、求める人材との出会いを実現することは可能です。データに真摯に向き合い、戦略的な採用活動を展開し、持続可能な組織づくりを目指しましょう。