Indeed・Google求人時代の「採用術」 ― 複数メディア運用の“地獄”を抜け出す方法

「Indeedには求人を出しているが、応募が頭打ちになってきた」「Googleしごと検索にも対応すべきか?」――採用チャネルの多様化に伴い、多くの企業がその運用に悩んでいます。
本記事では、なぜ今「複数メディアへの同時掲載」が必須なのかを解説すると共に、それに伴い発生する「オペレーションの負担」という深刻な課題を解決するための、具体的な手法とツールについて詳しくご紹介します。

目次

① なぜ「複数メディアへの同時掲載」が必須になったのか?

かつてはIndeedが圧倒的な一人勝ちでしたが、現在、求人検索エンジンの市場は「三強時代」に突入しています。Indeedに加え、「求人ボックス」、「スタンバイ」がシェアを伸ばしており、それぞれが異なるユーザー層を抱えています。

これらのユーザー層は完全には重なっておらず、Indeedにしかいないユーザー、求人ボックスしか見ないユーザーも確実に存在します。つまり、Indeedだけに求人を掲載することは、貴重な応募機会を自ら放棄していることと同義なのです。

忘れてはならない第4のチャネル「Googleしごと検索」

これら3大検索エンジンに加えて、自社の採用サイトを「Googleしごと検索」に直接掲載させることも極めて重要です。しかし、これに対応するには自社で採用サイトを構築し、専門的な設定(構造化データ)を行うという、相応のWebマーケティング活動が別途必要になります。結果として、採用担当者が管理すべき対象はさらに増え、複雑化していくのが現実です。

リスク分散の観点からも、複数のメディアに求人を掲載し、どのチャネルが自社に合っているかを分析・判断していく「ポートフォリオ戦略」が、現代の採用活動における必須科目となっています。

② 採用担当者を襲う「オペレーション地獄」とそのコスト

しかし、「全部のメディアを使えばいい」と単純に手を出してしまうと、多くの企業が「オペレーション地獄」に陥ります。「媒体Aの管理画面を開き、IDとパスワードを入力。次に応募者を確認し、Excelシートに転記。そして媒体Bの管理画面を開き…」といった、非効率でミスの温床となる作業に、担当者は追われることになります。

この手作業は、直接的な費用ではないため見過ごされがちですが、実際には担当者の貴重な時間を奪い、「人件費」という形で企業のコストを圧迫しています。時給1,800円の採用担当者が、複数媒体を手動で運用した場合の月間コストを試算してみましょう。

作業内容 想定作業時間(月間) 人件費換算(時給1,800円)
各媒体への求人掲載・更新作業 5時間 9,000円
自社採用サイトの更新・Google求人への対応 8時間 14,400円
各媒体の応募者をチェックし、管理シートに転記 10時間 18,000円
有料広告の日々の運用・予算管理 5時間 9,000円
合計 28時間 50,400円

応募者との連絡や面接調整の時間を含めれば、コストはさらに膨らみます。これだけの時間をかけても、応募者の情報がメールや各媒体の管理画面に散在し、誰が最新の情報を持っているのか分からない「情報のサイロ化」に陥りがちです。結果として、有望な候補者への連絡が遅れ、機会損失に繋がるという悪循環が生まれます。

③ 【解決策の決定版】採用管理システム(ATS)とその費用

この「オペレーション地獄」を解決する最も強力なソリューションが、「採用管理システム(ATS:Applicant Tracking System)」の導入です。ATSとは、採用業務のすべてを一元管理し、自動化・効率化するためのシステムです。

ATSが提供する3つのコア機能

1. 求人媒体への「一括投稿」機能

ATS上で一度求人情報を作成するだけで、Indeed、求人ボックス、スタンバイなど、連携している複数の求人検索エンジンにボタン一つで同時に掲載できます。修正や停止も一括で反映されます。

2. 応募者情報の「一元管理」機能

どの媒体から応募があっても、すべての応募者情報が自動的にATSのデータベースに集約されます。選考ステータスや履歴を一つの画面で管理できるため、対応漏れを防げます。

3. 採用チャネルの「効果測定」機能

「どの媒体経由で何件応募があり、採用単価はいくらか」を自動で集計・分析します。データに基づいた、費用対効果の高い予算配分が可能になります。

採用管理システム(ATS)の具体的な費用感

ATSの料金は、企業の規模や必要な機能によって様々ですが、中小企業向けのものでは以下のような価格帯が一般的です。

初期費用:5万円 ~ 20万円程度 月額費用:3万円 ~ 10万円程度

先ほどの試算で明らかになった手動運用の「見えざる人件費(月5万円~)」と比較すれば、ATSの導入は単なるコスト増ではなく、むしろ人件費を削減し、採用担当者の生産性を向上させるための「投資」であると考えることができます。代理店や採用代行(RPO)に委託すれば月額数十万円以上かかるケースも多く、内製化を目指すならATSが最も費用対効果の高い選択肢となり得ます。

④ 【予算がない企業向け】手動オペレーションを効率化する具体的テクニック

すぐにATSを導入するのが難しい、あるいは採用人数がそれほど多くないという企業でも、工夫次第で手動運用を効率化することは可能です。

1. 「応募者管理シート」をクラウドで共有する

Excelではなく、「Googleスプレッドシート」を活用して応募者管理のマスターシートを作成しましょう。クラウドベースであるため、複数人でリアルタイムに同時編集でき、場所を問わずにアクセス可能です。「誰が」「いつ」「何をしたか」の変更履歴も自動で残るため、情報の分断や先祖返りを防げます。

2. 「マスター求人票」で媒体ごとの差を吸収する

各媒体は、入力できる文字数や必須項目が微妙に異なります。そこで、まず自社で考えうる全ての情報を盛り込んだ、最も詳細な「マスター求人票」をWordなどで作成します。そして、各媒体へ掲載する際は、このマスターから情報をコピーし、その媒体の仕様に合わせて不要な部分を削ったり、調整したりするのです。これにより、情報の抜け漏れを防ぎ、常に最高の情報量を担保できます。

3. 「応募受付専用メールアドレス」で情報を集約する

各媒体からの応募通知が、担当者個人のメールボックスに届く設定は絶対に避けましょう。

recruit@自社ドメインのような応募受付専用のメールアドレス(またはメーリングリスト)を作成し、複数人で確認できる体制を整えるだけで、対応漏れや属人化を劇的に減らすことができます。

4. 「簡易ダッシュボード」で費用対効果を見える化する

Googleスプレッドシートに、もう一つ「効果測定」用のシートを追加しましょう。ここに各媒体の有料広告費と、そこから来た応募数を毎週末など定期的に入力します。簡単な関数(=B2/C2など)を使えば、応募単価(CPA)が自動で計算される簡易的なダッシュボードが作れます。これにより、「今月は求人ボックスのCPAが良いから、来月はここに予算を寄せよう」といったデータに基づいた判断が楽になります。

現代の採用活動は、根性や努力だけで乗り切れるものではありません。

いかに優れた「仕組み」や「ツール」を導入し、人間がやるべき本質的な業務に集中できる環境を作るか。その視点こそが、採用の成否を分けるのです。

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