求職者の利用媒体と接触の心理 – 世代別戦略で採用を成功へ

「求人広告を出しても、どの媒体が効果的なのかわからない…」
「若手はスマホアプリ、ベテランはPCブラウザ?どのデバイスにこだわるべき?」
現代の求職者は、仕事探しに多様な媒体やデバイスを利用しています。スマートフォン、PC、ウェブブラウザ、スマホアプリ、そしてSNSまで、その接触方法は世代や職種によって大きく異なります。企業が効果的な採用戦略を立てるためには、この「媒体の使い分け」と「求職者の心理」を深く理解することが不可欠です。

本記事では、公的機関や民間調査機関のデータを基に、求職者の世代別の媒体利用状況と接触の仕方を詳細に分析します。その上で、企業ホームページやWebサービス、スマホアプリなどが求職者に与える影響を考察し、企業がどこに徹底的にこだわり、何をすべきかを具体的に解説します。数値データやグラフ、フロー図を交えながら、実践的なアクションプランを提示します。

求職者の媒体利用状況 – 世代別、デバイス別の違い

求職者が仕事探しに利用する媒体は多岐にわたり、その利用状況は年代によって大きく異なります。総務省の「通信利用動向調査」(※1)や各求人メディアの調査から、その傾向が見えてきます。

世代別インターネット利用率 – デバイス別(2023年調査傾向)
世代別 求人情報接触媒体割合(2023年調査傾向)
スマートフォンでの求職活動 – アプリ vs ブラウザ利用割合(2023年調査傾向)

上記グラフが示す通り、スマートフォンからのインターネット利用は全世代で主流ですが、求職活動においてはその詳細な利用パターンが異なります。若年層ほどアプリの利用が中心となり、高齢層ほどPCやウェブブラウザでの利用も併用する傾向が見られます。

※1:総務省「通信利用動向調査」、リクルート「就職白書」、マイナビ「転職動向調査」など、複数の公的・民間調査の一般的な傾向に基づき編集したデータ。特定の年度や数値に厳密に限定されるものではありません。

求職者の行動心理 – 「どこで見て、どう感じるか」

求職者は、利用する媒体や接触方法によって、受け取る情報や抱く感情、そして次の行動が異なります。企業は、それぞれのチャネルが持つ特性を理解し、求職者の心理に合わせたアプローチが必要です。

媒体別の求職者心理と企業に求められること

企業ホームページ(採用サイト)
心理: 企業が最も伝えたい情報がある場所。企業の理念、ビジョン、文化、社員の声、詳細な事業内容などを深く知りたいと感じる。「信頼できるか」「入社後、本当に活躍できるか」を判断する。
企業に求められること: 最新の情報、社員インタビュー、職場風景写真、採用実績、明確な応募プロセスなど、信頼性と具体性を重視したコンテンツ。スマートフォンでの表示最適化は必須。
求人サイト・求人検索エンジン
心理: 効率的に多くの求人情報を比較検討したい。希望条件に合う求人を素早く見つけたい。「自分に合う仕事があるか」「条件は満たしているか」を瞬時に判断する。
企業に求められること: 求人タイトル、概要文、キーワードの最適化(SEO対策)。給与、勤務地、休日など、基本情報を簡潔かつ明確に提示。応募への誘導をスムーズに。
スマートフォンアプリ(求人アプリ)
心理: 手軽さ、スキマ時間の活用、パーソナライズされた情報の受け取りを重視。プッシュ通知による新しい求人への接触。「片手でサクサク操作できるか」「直感的に情報が得られるか」が重要。
企業に求められること: アプリ経由での応募フローの簡素化。通知機能への連携。アプリに特化した画像や動画コンテンツの活用。
SNS(X, Instagram, YouTube, TikTokなど)
心理: 企業のリアルな雰囲気や社員の素顔を知りたい。共感できる情報や、飾らない日常に触れたい。友人の口コミやインフルエンサーの情報を信頼する傾向。「自分らしさを出せるか」「この人たちと一緒に働きたいか」を直感的に判断する。
企業に求められること: 企業文化の発信、社員の日常、イベント風景などの動画や写真。双方向のコミュニケーション。無理に作り込みすぎない「素の魅力」。

どこにこだわるべきか? – 企業が重視すべきチャネル

求職者の媒体利用状況が多様化する中で、企業はどのチャネルに注力すべきでしょうか?結論から言えば、自社の採用ターゲットが最も利用するチャネルに「こだわる」べきです。

ターゲットに合わせた重点チャネル

新卒・若手層(Z世代中心)
重点チャネル: スマートフォンアプリ(特にTikTok, Instagram, YouTube)、SNS、Webブラウザ(PC含む)
理由: 普段からアプリ利用が中心で、短尺動画やビジュアルコンテンツでの情報接触に慣れています。企業には「素の魅力」「共感性」を求めます。
中途・ミドル層
重点チャネル: PCでの求人検索エンジン、企業ホームページ、LinkedIn、SNS(X, YouTube)
理由: 複数の情報を比較検討するためPC利用も多く、企業サイトや専門性の高いSNSで詳細な情報を得ようとします。信頼性やキャリアパスを重視します。
地域・職種限定層(アルバイト、専門職など)
重点チャネル: スマートフォンアプリ(タウンワーク、バイトルなど)、地域特化型求人サイト、SNS(Facebook, Instagram)
理由: 日常のスキマ時間で手軽に仕事を探す傾向が強く、特定の地域や職種に特化したアプリやサイトが効率的です。

最も重要なのは、自社の採用ターゲットが「今、どこで、どのように仕事を探しているか」を正確に把握することです。そして、そのチャネルにリソースを集中し、最適なコンテンツと体験を提供することが、採用成功への近道となります。

企業が今すぐ取るべきアクションプラン

求職者の多様な媒体利用と心理を理解した上で、企業は以下のような具体的なアクションを取るべきです。

1. 採用ターゲットの明確化とペルソナ設定
(誰に、どんな情報を届けたいか。年齢、性別、行動特性、情報収集源)
2. ターゲットに最適な媒体・チャネルの選定と集中
(スマホアプリ、PCブラウザ、SNSなど、データに基づき優先順位付け)
3. モバイルファーストの徹底(スマホでの見え方を最優先)
(求人サイト、採用サイト、応募フォーム全てでスマホ最適化)
4. 媒体特性に合わせたコンテンツの最適化
(アプリは簡潔・視覚的、PCは詳細情報、SNSはリアル・共感性重視など)
5. 企業ホームページの「ハブ」機能強化
(各媒体からの流入を受け止める最終的な情報源として充実化)
6. 効果測定とPDCAサイクルによる継続的改善
(各チャネルからの応募数、CTR、CVRを分析し、改善に繋げる)

自社のターゲットを知る – 調査方法

自社の採用ターゲットがどのような媒体をどのように利用しているかを知るためには、以下のような調査方法が有効です。

主な調査方法

1. 既存社員へのヒアリング
特に、採用ターゲット層に近い若手社員や、中途入社の社員に、普段どのような媒体で情報収集しているか、転職活動時に何を見ていたかなどをヒアリングしましょう。リアルな声が最も参考になります。
2. 応募者へのアンケート
選考に進んだ応募者に対し、「どの媒体で弊社の求人を知りましたか?」「普段、どのような情報収集をしていますか?」といったアンケートを実施しましょう。具体的な流入経路が把握できます。
3. ATSや求人媒体のアナリティクス分析
採用管理システム(ATS)やIndeed、求人ボックスなどの管理画面で提供されるレポート機能を活用し、求人への流入経路やデバイス、時間帯などを分析しましょう。クリック数や応募数が多い経路を特定できます。
4. アクセス解析ツール(Google Analytics等)の活用
自社の採用サイトや企業ホームページへの流入元、ユーザーの利用デバイス、サイト内での行動などを分析することで、どのチャネルからの流入が多いか、どの情報に興味があるかなどを詳細に把握できます。

まとめ – データと心理で「選ばれる」企業へ

現代の求職活動は、多岐にわたる媒体とデバイス、そして複雑な心理的プロセスによって行われています。企業がこの多様な環境の中で採用を成功させるためには、求職者の世代別、デバイス別の利用状況を正確に理解し、それに対応した戦略を立てることが不可欠です。

「どこで見て、どう感じるか」という求職者心理を深く洞察し、モバイルファーストの徹底、媒体特性に合わせたコンテンツの最適化、そして企業ホームページのハブ機能強化といったアクションを複合的に実施しましょう。

データ分析に基づき、常に自社の採用チャネルとコンテンツを改善し続けることで、あなたの企業は膨大な情報の中で「選ばれる存在」となり、求める人材との出会いを最大化できるでしょう。

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