「インターンシップを導入したいが、どんな種類があるのか…」
「形式的なインターンでは意味がないと聞くけれど、具体的にどうすれば良い?」
日本の新卒採用において、インターンシップは今や企業と学生双方にとって重要な接点となっています。しかし、その実態は多岐にわたり、単なる「就職活動の一部」として捉えられているケースも少なくありません。
本記事では、日本のインターンシップ制度の現状を、有給と無給、実務型と学習型といったタイプ別に詳細に解説します。法制度上の留意点や、実は法律違反となりうるケースの具体例にも触れながら、企業がインターンシップ制度を通じて採用を成功させるための具体的なアクションプランを提示します。成功企業の実例から学び、自社に最適なインターンシップ戦略を立案するヒントを提供します。
日本のインターンシップの現状と種類
日本のインターンシップは、文部科学省・厚生労働省・経済産業省が定める「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的な考え方」(通称:3省合意、2023年改定)に基づき運用されています。これにより、従来の「短期の職業体験」から、より「就業体験」を重視する方向へと変化しています。
インターンシップの主な種類と特徴
企業の実際の業務を体験するプログラムで、学生に職業理解を深めさせることを主目的とします。
期間
5日間以上の実施が推奨されています。
報酬
「労働」とみなされる場合は賃金の支払い義務が生じます。「報酬あり(有給)」と「報酬なし(無給)」の両方があります。
特徴
2023年改定の3省合意で、このタイプのうち一定の条件を満たすものは、終了後に採用選考に直接接続できるようになりました。
企業や業界の情報提供、社員との交流、グループワークなどが中心で、実務体験は伴いません。
期間
1日~数日間といった短期のものが多いです。
報酬
原則無給で、交通費や昼食代のみ支給されるケースがほとんどです。
特徴
採用選考とは直接接続しない「広報活動」としての位置づけが強いです。業界理解や企業認知度向上に貢献します。
インターンシップの良い点・悪い点
双方が実態を理解した上で、入社後のギャップを減らせる。
優秀な人材の早期囲い込み
選考直結型の場合、青田買い的な形で優秀な学生を確保できる。
学生のスキルアップ・成長支援
実務経験やフィードバックを通じて学生の成長を促し、企業イメージ向上に繋がる。
プログラム設計、学生の指導・評価、受け入れ体制の構築に工数とコストがかかる。
「名ばかりインターン」のリスク
後述のように、実態が伴わない無給インターンは法的な問題に発展する可能性。
学業との両立の難しさ
学生側は学業との両立が難しく、参加できる学生が限定される場合がある。
法制度上の留意点と「名ばかりインターン」のリスク
インターンシップを適切に実施するためには、法的な位置づけを正確に理解することが非常に重要です。特に、報酬の有無や実務内容によっては、労働関係法令が適用され、企業側に賃金支払いや労働時間管理などの義務が発生します。
主な法制度上の留意点
無給であっても、実態が労働であれば賃金支払い義務が生じます。
法律違反とみなされるケースの例:
- 無給で、社員と同様の定型業務を継続的に行わせている。(例: 毎日データ入力のみ、電話対応のみなど)
- 学生への教育プログラムやフィードバックが一切ない。
- インターン生への指揮命令が強く、業務拒否の自由がない。
- 事故発生時の労災保険や賠償責任が明確でない。
インターンシップは、企業イメージを向上させる機会である一方で、法律違反のリスクも伴います。必ず関係法令を確認し、適切な運用を行うことが、企業と学生双方にとって健全な関係を築くための大前提となります。
インターンシップで採用を成功させる企業事例
インターンシップを単なる「体験」で終わらせず、採用成功に繋げている企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか。ここでは、目的別に具体的な事例をいくつか紹介します(公表情報に基づく事例、または一般的な傾向を反映したモデル事例)。
1. 認知度・好印象を重視し、新卒採用を成功させる事例
約2ヶ月間の社員同等レベルの実践的な開発業務。メンター社員がつき、定期的なフィードバックと評価を実施。プログラム終盤に選考機会を設ける「選考直結型」。
担当者・カリキュラム
開発部のエンジニアがメンターとなり、実際のプロジェクトにアサイン。人事担当者は選考プロセスや学生フォローを担当。技術的成長と企業理解を両立させる緻密なカリキュラム。
成功のポイント
学生は「実務を通して本気で成長できる」と感じ、企業は「ミスマッチなく優秀なエンジニアを早期に囲い込める」。インターン生の約半数が内定を獲得し、高い採用決定率と入社後の定着率を誇ります。
1~2週間程度で、ビジネス課題解決型のワークショップを実施。企画立案からプレゼンテーションまでを行い、社員から多角的なフィードバックを受ける。
担当者・カリキュラム
事業部の若手・ミドル層社員がメンターやグループリーダーを担当。人事担当者はプログラム運営と学生の個別フォローに注力。
成功のポイント
学生は「事業の面白さ」「社員の熱意」「企業文化」を深く体感でき、企業は学生の論理的思考力やチームワークを見極められる。インターンシップ経由の採用者は入社後の立ち上がりが早く、定着率も高い傾向。
2. 労働力・即戦力重視で、特定の人材ニーズを満たす事例
人手不足の製造現場において、半年から1年間の長期有給インターンシップを導入。学生は生産ラインの管理、品質検査、機械操作など、社員と同様の具体的な実務に従事。
担当者・カリキュラム
現場のリーダー社員がOJTトレーナーとなり、日々業務を指導。人事担当者がビザ取得サポートや日本語学習支援(週1回の日本語教室など)も手厚く実施。
成功のポイント
即戦力としての活躍を期待でき、企業は外国人材の適応力や日本語能力を実務を通して見極められる。インターン後、約7割の留学生が正社員として入社し、戦力化と定着に成功。
介護人材不足解消のため、大学の福祉学科と連携し、数ヶ月間の実習型インターンシップを実施。学生は施設利用者との交流、身体介護補助、レクリエーション企画など、介護現場のリアルを体験。
担当者・カリキュラム
介護福祉士のベテラン職員が指導担当。学生には交通費・昼食代を支給。月に1回、インターン生と社員の懇親会を開催し、本音で語り合える場を提供。
成功のポイント
学生は介護のやりがいと厳しさを肌で感じ、入社後のミスマッチを大幅に削減。インターンシップ経由の応募者には選考優遇を行い、定着しやすい人材の採用を促進。特に、学生が「給与が低い」といった理由で介護職を敬遠する前に、仕事の「人との繋がり」といった魅力を伝えることに成功。
これらの事例に共通するのは、単なる「体験」ではなく、「企業と学生の双方向の見極め」を重視し、「就職に繋がる具体的なルート」を意識してプログラムを設計している点です。
インターンシップ制度で採用を強化するためのアクションプラン
インターンシップを戦略的な採用ツールとして最大限に活用するために、企業が実践すべき具体的なステップと留意点をまとめます。
アクションプラン – 具体的な留意事項
まとめ – インターンシップを戦略的採用ツールに
海外のインターンシップは、企業が学生の能力を見極め、そのまま採用に繋げる「実践型・選考直結型」が主流です。日本のインターンシップも、政府のガイドライン変更や企業の人材ニーズの高まりを受け、このモデルに近づきつつあります。
インターンシップを成功させる鍵は、単なる「体験の提供」に終わらせず、明確な採用目標を設定し、実践的なプログラムを提供することです。そして、有給化の検討、留学生への手厚いサポート、社員全体での協力体制の構築、法制度の遵守といった具体的なアクションを複合的に実施することが求められます。
質の高いインターンシップは、学生にとっては貴重な成長機会となり、企業にとってはミスマッチのない採用、入社後の高い定着率へと繋がります。インターンシップを戦略的な採用ツールとして最大限に活用し、優秀な人材との出会いを加速させましょう。