Indeed有料掲載のクリック単価はどこまで高くなった?― データで読み解く「人材争奪戦」の最前線

「Indeedで求人を出しても以前より費用がかかる」「クリック単価(CPC)が高騰している」――
多くの企業がIndeedの有料掲載において、かつてない採用コストの課題に直面しています。
求職者と企業を繋ぐプラットフォームとして絶大な影響力を持つIndeedですが、その裏側で今何が起きているのか。
総合的な市場調査に基づくデータを基に、Indeedのクリック単価の現状と、これから企業がとるべき戦略を徹底解説します。

Indeedクリック単価(CPC)の現状:高騰するその背景

Indeedの有料掲載におけるクリック単価(CPC)は、現在、多くの企業にとって無視できないレベルで上昇を続けています。
一口に「CPC」と言っても、その金額は職種、地域、企業のブランド力、求人情報の質、そして設定された予算や競合の状況によって大きく変動します。
しかし、総合的な市場調査の結果、今日のIndeedの平均的なCPCは、数年前と比較して明らかに高騰しており、企業はより戦略的な運用を求められています。

この高騰の背景には、日本全体の人手不足感の深刻化、特定の職種における人材獲得競争の激化、そしてIndeed利用企業の増加による競争激化が挙げられます。
多くの企業が「まずはIndeedで」と考えるため、結果として需要と供給のバランスが崩れ、クリック単価が上昇する傾向にあるのです。
もはや「求人を出せば人が集まる」という時代は終わり、いかに効果的に費用を投じ、優秀な人材を獲得するかが問われています。

特に都市部や専門職においては、1クリックあたりの単価が数百円から時に数千円に達するケースも珍しくありません。
これは、求職者が求人を閲覧するたびに企業にコストが発生するIndeedのシステムにおいて、予算消化のスピードと効率に直結する重要な要素です。

職種別CPCトレンド:高額な職種と低額な職種

Indeedのクリック単価は、募集する職種によって大きく異なります。特に専門性が高く、かつ供給が少ない職種では、CPCが高くなる傾向にあります。以下に、職種別のCPC傾向をまとめました。

主要職種別Indeedクリック単価(CPC)目安
職種カテゴリ CPC目安(1クリックあたり) 特徴・背景
ITエンジニア(開発・インフラ) 800円~2,500円 圧倒的な需要と供給不足。高度なスキルが求められるため単価高騰。
医療・介護専門職 700円~2,000円 少子高齢化で需要が増大。資格必須のため供給が追いつかない。
建設・土木・建築専門職 600円~1,800円 高齢化と若手不足が顕著。現場のDX化も進まず人材確保が困難。
営業職(特に法人・専門商材) 500円~1,500円 企業活動に直結するため需要が高く、成果主義の傾向が強い。
マーケティング・広報 400円~1,200円 デジタル化に伴う需要増。専門知識や経験が求められる。
その他(事務・軽作業・飲食・小売) 100円~700円 比較的募集数が多く、CPCは安定しているが、地域や条件で変動。

この表からもわかるように、特にITや医療・介護、建設といった専門性が高く、構造的な人手不足が指摘されている分野では、CPCが高額になる傾向が顕著です。これは、限られた人材を多くの企業が奪い合う結果、競争原理が働き、広告費が高騰していることを示しています。

業種別CPC比較:採用競争の激しさを示す指標

職種だけでなく、属する「業種」によってもIndeedのクリック単価は大きく変動します。特定の業種は慢性的な人手不足に直面しており、それがCPCにも影響を与えています。

主要業種別Indeedクリック単価(CPC)目安比較

グラフが示す通り、「IT・通信」「医療・福祉」「建設・不動産」といった業種が特に高いCPCを示しています。
これらの業種は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、高齢化社会の進展、インフラ整備の需要増など、社会の変化を背景に人材需要が急増しているにも関わらず、労働力の供給が追いつかない状況です。
一方、「小売・飲食」や「サービス」業は、単価自体は比較的低いものの、募集人数が多く、総額での採用コストは依然として高い傾向にあります。

「業種別のCPCは、その業界全体の人手不足度合いと、競合他社の採用意欲が反映された鏡と言えるでしょう。」

CPCの過去との比較:上昇傾向は止まらない

Indeedの有料掲載におけるクリック単価は、長期的に見て一貫して上昇傾向にあります。数年前には考えられなかったような高額なCPCが、今や当たり前になりつつあります。

Indeed平均クリック単価(CPC)推移(全職種・全業種平均)

上記のグラフは、全職種・全業種の平均的なIndeedクリック単価の推移を示しています。2020年以降、特に顕著な上昇が見られ、この5年間で平均CPCは約1.5倍に増加していると推定されます。
この上昇は、新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に採用活動が停滞した時期もありましたが、経済活動の再開とともに採用需要が爆発的に増加し、かつてない人材の「奪い合い」が起きていることを如実に示しています。

加えて、Indeedに掲載する企業数自体も年々増加しており、プラットフォーム内での競争が激化していることもCPC上昇の大きな要因です。
以前は少額の予算でも一定のクリック数を確保できたかもしれませんが、今ではその予算では十分な露出を得られないケースが増えています。

データから読み解く:なぜIndeed CPCは高騰しているのか?

IndeedのCPC高騰は、単一の要因で説明できるものではありません。複数の要因が複雑に絡み合い、現状を形成しています。

CPC高騰の主な要因

  • 1. 構造的な人手不足の深刻化: 少子高齢化による労働人口の減少が、あらゆる産業で人材確保を困難にしています。
  • 2. Indeed利用企業の増加と競争激化: 多くの企業がIndeedを主要な採用チャネルと位置づけており、限られた検索結果枠をめぐる入札競争が激化しています。
  • 3. Indeedの積極的な広告露出とリクルートの成長戦略:

    IndeedはテレビCM、ウェブ広告などで莫大な広告費を投じ、日本国内での認知度を飛躍的に高めてきました。特に親会社であるリクルートがIndeedの成長を強く推し進める戦略をとっており、これにより求職者側のユーザー数が爆発的に増加しました。同時に、採用難に直面する企業側もIndeedへの注目度を高め、有料掲載の出稿企業数も飛躍的に増え続けていることが、競争をさらに激化させ、結果としてCPCの高騰に繋がっています。

  • 4. 求職者の多様な働き方へのニーズ: 給与、勤務地、福利厚生だけでなく、「リモートワーク可」「残業なし」「時短勤務」など、求職者の求める条件が多様化し、企業はより魅力的な条件提示を迫られています。
  • 5. アルゴリズムと検索行動の変化: Indeedのアルゴリズムは常に進化しており、求職者の検索行動も変化しています。これにより、特定のキーワードや職種で上位表示されるためのコストが増加する傾向にあります。

これらの要因は、単に広告費が増えるだけでなく、採用活動そのものの難易度を上げています。
企業は、ただ求人広告を出すだけでなく、自社の魅力を最大限に伝え、求職者に「選ばれる」ための工夫を凝らす必要に迫られています。

Indeed CPCを最適化する戦略:費用対効果を高めるために

高騰するIndeedのCPCに対して、企業は手をこまねいているわけにはいきません。限られた予算で最大限の採用効果を得るためには、戦略的な運用が不可欠です。

Step 1. 求人情報の質を徹底的に高める

CPCを抑えながらも応募数を増やすには、求人情報の「質」が最も重要です。Indeedは求人情報の関連性が高いほど上位表示されやすいため、職務内容、必要なスキル、給与、福利厚生などを具体的に記載し、求職者の検索キーワードとの合致度を高めることが重要です。また、会社の魅力や働きがいを具体的に伝えることで、ミスマッチを防ぎ、質の高い応募に繋がります。

Step 2. 予算と入札単価を細かく調整・管理する

Indeedの広告運用では、予算設定とクリック単価の管理が成功の鍵を握ります。自動入札に任せきりにせず、職種や地域、時間帯によって手動で入札単価を調整することで、無駄なクリックを減らし、費用対効果を高めることができます。特に、競合が多い時間帯や職種では、適正な単価を見極めることが重要です。

確認すべきポイント

  • ✕ 予算を日額でなく月額で設定している → 日によって表示回数に偏りが出る可能性。
  • ✕ クリック単価を常に最大値に設定している → 不要なクリックに高額を支払うことに。
  • ✕ 応募の少ない求人にも高額予算を投じている → 費用対効果が低い。

定期的なパフォーマンスチェックと、それに基づく柔軟な予算・単価調整が不可欠です。

Step 3. 他の採用媒体・手法も併用する

IndeedのCPC高騰が続く中、Indeed一辺倒の採用戦略では費用対効果が悪化するリスクがあります。採用ターゲットや職種に応じて、総合的な費用対効果を考慮し、他の採用媒体や手法も積極的に検討・併用することが重要です。例えば、以下のような媒体や手法が考えられます。

  • 人材紹介サービス: 成功報酬型が多いため、採用が決まるまで費用が発生しない。専門性の高い職種や即戦力採用に有効。
  • SNS採用(ダイレクトリクルーティング): LinkedIn, X (旧Twitter), FacebookなどのSNSを活用し、企業が直接候補者にアプローチ。費用を抑えつつ、潜在層にリーチ可能。
  • 自社採用サイト・オウンドメディア: 会社の魅力や文化を深く伝え、エンゲージメントの高い候補者を集める。長期的な採用コスト削減に貢献。
  • 求人イベント・説明会: 地域密着型や特定の専門分野に特化したイベントで、直接求職者と交流し、魅力を伝える機会を創出。

各媒体の特性を理解し、自社の採用課題とターゲットに最適なポートフォリオを組むことが、これからの採用成功の鍵となります。

Step 4. データ分析と改善サイクルを回す

Indeedの管理画面やGoogle Analyticsを活用し、どの求人がどれくらいのCPCで、どれくらいのクリック・応募を獲得しているかを常に分析しましょう。効果の低い求人にはテコ入れを行い、改善サイクルを回すことが重要です。
クリック率(CTR)や応募率(CVR)の低い求人は、CPCが高くても応募に繋がりにくいため、内容の見直しや一時停止も検討すべきです。

Indeedでの採用は、もはや「広告費をかけるだけ」の時代ではありません。
求人情報の最適化、戦略的な予算運用、そして継続的な分析と改善が、人材争奪戦を勝ち抜くための必須条件です。
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