その求人、本当は見られてすらいない?Indeedで“勝つ”ための競合調査マニュアル

「うちの業界の給与相場はこんなものだ」「昔からこの条件で募集している」――そんな”社内の常識”や”過去の慣習”に基づいて求人情報を作成していませんか?Indeedをはじめとする現代の採用市場は、求職者がスマホ一つで無数の求人を比較する「相対比較の市場」です。
本記事では、感覚に頼るのではなく、客観的なデータに基づいて「選ばれる」求人条件を設定するための、具体的な調査方法を徹底解説します。

① なぜ「客観的な調査」が不可欠なのか?

採用が上手くいかない企業の多くは、求職者が自社の求人を「見ているけれど、選んでくれない」と考えています。しかし、現実はもっと厳しく、魅力のない条件の求人はそもそも求職者の目に触れることすらないケースがほとんどです。

Indeedの検索アルゴリズムは、求職者にとって有益で、情報が豊富かつ透明性の高い求人を上位に表示するよう設計されています。給与や休日が「応相談」「当社規定による」といった不明確な求人や、市場相場から大きくかけ離れた条件の求人は、検索結果の下位に埋もれてしまい、クリックされる機会すら得られません。

つまり、魅力的な条件を設定することは、単に応募率を上げるためだけでなく、そもそも求職者に自社の存在を認知してもらうための「入場券」でもあるのです。その入場券を得るために、客観的な競合調査が不可欠となります。

② 「ブラック企業」への嫌悪感と高まる法令順守の視線

現代の求職者は、企業の「評判」に極めて敏感です。SNSや企業の口コミサイトの普及により、労働環境に関する情報は瞬時に共有され、一度「ブラック企業」のレッテルを貼られてしまうと、そのイメージを払拭するのは容易ではありません。

この状況下で、求人票に求められるのは「誠実さ」と「透明性」です。「残業代全額支給」や「各種社会保険完備」といった法令順守は、もはやアピールポイントではなく、守られていて当然の「最低ライン」と認識されています。むしろ、これらをわざわざアピールすることで、「当たり前のことができていない会社なのでは?」と、かえって不信感を抱かれるリスクすらあります。

求人票は、求職者がその会社を判断する最初のフィルターです。少しでも不誠実さや不透明さを感じさせる表現は、即座に応募候補から外されるという厳しい現実を理解する必要があります。

③ 【実践編】Indeed上で競合の「勝ちパターン」を分析する方法

最も手軽で効果的なのが、求職者と全く同じ目線でIndeedを使い、競合の動向を調査することです。以下の3ステップで、自社が戦うべき市場の「相場」と「勝ち筋」を見つけ出しましょう。

Step 1:検索キーワードとエリアを定義する

まず、自社が採用したい人材が、どんなキーワードで検索するかを想定します。例えば「東京都 港区 ドライバー 未経験」や「営業 20代 第二新卒」など、具体的であるほど効果的です。

Step 2:上位20社の求人情報をデータ化する

定義したキーワードで検索し、表示された求人のうち、スポンサー枠(有料広告)とオーガニック枠(無料掲載)の両方を含めて、上位20社程度の求人情報をスプレッドシートなどに書き出します。

Step 3:分析し、「市場相場」と「勝ち筋」を発見する

集めたデータを基に、以下の項目について「平均値」「最高値」「最低値」などを分析します。これが、あなたの会社が戦うべき「市場相場」です。

分析項目 チェックするポイント
給与(下限~上限) 月給・年収のレンジはどのくらいか? 固定残業代は含まれているか?
年間休日数 「105日」「120日以上」など、具体的な日数が記載されているか?
福利厚生・手当 住宅手当、家族手当、資格取得支援など、特徴的な制度はあるか?
職種名のキーワード 「未経験歓迎」「土日祝休み」「リモート可」など、魅力的なキーワードが職種名に含まれているか?

要注意!求職者が“ブラック企業”を疑う危険なキーワード

  • 「みなし残業」「固定残業代」(※ただし、内訳が不明瞭な場合)
    制度自体は合法ですが、「月〇時間分、〇〇円を含む」という具体的な記載がない場合、「どれだけ残業させられるか分からない」という強い不安を与えます。
  • 「アットホームな職場」「社員は家族」
    プライベートへの過度な干渉や、休日・時間外の付き合いを強要される文化を連想させ、特に若手層から敬遠されます。
  • 「若手が活躍」「裁量権が大きい」
    聞こえは良いですが、「研修やサポート体制がなく、責任だけ丸投げされるのでは?」という疑念に繋がることがあります。
  • 「夢」「やりがい」「自己成長」の多用
    具体的な待遇改善を伴わずにこれらの言葉を多用すると、「やりがい搾取(やりがいを盾に、低賃金・長時間労働を強いること)」を疑われます。

④ Indeedの無料ツールで自社の給与を客観視する

Indeedは、企業が自社の給与水準を客観的に判断するための無料ツールを提供しています。それが「給与検索ツール」です。

これは本来、求職者が職種と勤務地を入力して給与相場を調べるための機能ですが、採用企業側も大いに活用できます。自社が募集したい「職種名」と「勤務地」を入力することで、そのエリアにおける給与水準の平均値や、どのような企業が求人を出しているかを把握できます。
このツールは、以下のURLから誰でも利用できます。

Indeed 給与検索ツールを開く

このツールで表示される金額は、あくまでIndeed上の掲載データに基づく推定値ですが、求職者が見ているのと同じデータを見ることができる、という点が重要です。求職者はこの相場を見て、あなたの会社の給与が高いか安いかを判断します。自社の提示額がこの相場から大きく外れていないか、必ず確認しましょう。

⑤ マクロ調査で「求職者が本当に求めているもの」を知る

競合の動向だけでなく、より大きな視点で「現代の求職者が何を重視しているのか」を知ることも重要です。株式会社マイナビが発表した「転職動向調査2025年版」などの大規模な調査では、求職者が転職先の企業を選ぶ際に重視する点が明らかにされています。

調査結果によると、求職者が企業を選ぶ決定打となるのは、「給与が良い」「休日や残業時間が適切」といった待遇面が依然として上位を占めています。一方で、近年は「希望の仕事内容・職種であること」や「やりがい・達成感を感じられること」、「自己成長できる環境」といった、キャリアの質や働きがいを重視する傾向も強まっています。

これらのマクロな調査結果からわかるのは、まず「給与」や「休日」といった土台となる条件で競合に劣らないことが大前提であり、その上で、自社ならではの「仕事のやりがい」や「成長できる環境」といった付加価値を、求人票で具体的に伝えられるかどうかが、採用成功の分かれ目になるということです。
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