Indeedクリック単価の自動化 – 予算管理と採用戦略の未来

求人検索エンジンとして圧倒的な存在感を放つIndeedにおいて、そのクリック単価(CPC)の運用モデルが大きく変化しました。
かつて可能だった「手動での指値設定」が廃止され、IndeedのAIによる自動運用が全面的に導入されたことで、企業は新たな予算管理と採用戦略を迫られています。
本記事では、Indeedの公式発表に基づき、この変更の詳細と背景を解説します。さらに、この変化に対する企業側の具体的な反応や懸念を分析し、新しい時代において、企業が予算を適切に管理しながら採用目標を達成するための実践的なアクションを提言します。

Indeedクリック単価モデルの大きな変化

Indeedの有料広告(スポンサー求人)において、企業が個別にクリック単価を設定する「手動入札(指値設定)」の方式が、2023年4月に完全に廃止されました。
これにより、全ての広告運用はIndeedのAIによる「自動運用」へと移行し、企業は目標設定型の4つのキャンペーンタイプから運用パターンを選択する形へと大きく変わりました。

手動入札廃止の背景と新しい運用方法

Indeedは、求職者の検索行動や求人情報との関連性などをAIが学習し、最も効率的に応募を獲得できるクリック単価を自動で調整する方針を強化しました。これは、より多くの応募数を最大化することや、企業の目標応募数・応募単価に合わせた運用をAIが最適に行うことを目的としています。
現在提供されている主な運用方法は以下の4つです。

  • バランス型
    複数の求人案件がある場合に、予算を均等に配分し、全ての求人から応募をバランス良く集めることを目指します。
  • 応募数最大化型
    設定した予算内で、期間中に最も多くの応募数を獲得することを最優先とする運用です。特定の求人や短期間で大量の応募を集めたい場合に有効です。
  • 目標応募数重視型
    案件ごとに目標応募数を設定し、その目標達成のために予算を最適に配分する運用です。人気の求人に予算が集中しすぎることを防ぎつつ、必要な応募数を確保できます。
  • 目標応募単価重視型
    キャンペーン全体の目標応募単価を設定し、その単価を基準に応募を獲得することを目指します。予算管理を厳密に行いたい場合に適しています。

これにより、企業は日々のクリック単価調整の手間が省ける一方で、Indeedのアルゴリズムに予算配分を委ねる形となりました。

図1. Indeedクリック単価の目安(例示データ)

Indeedの自動化に対する企業側の反応と懸念

手動入札の廃止は、多くの企業や採用担当者に様々な影響を与え、賛否両論の声が上がっています。

主な懸念点 – 費用高騰とコントロールの喪失

  • クリック単価(CPC)や応募単価(CPA)の高騰
    最も多く聞かれる懸念が、自動運用への移行に伴う費用高騰です。手動で細かく単価を調整していた企業からは、「自動運用に切り替えてからCPAが1.5倍から2.5倍に跳ね上がった」という声も上がっています。AIが予算を最大限に活用しようとするため、競争が激しい職種では単価が上昇しやすくなります。
    (具体例: 経験豊富なITエンジニアの採用で、手動運用時の2倍以上のCPAを記録したケース)
  • 予算消化スピードの予測困難化
    AIが予算を最適に使うため、日々の予算消化スピードが読みにくくなりました。これにより、月末に予算を使い切ってしまったり、逆に余らせてしまったりするなど、柔軟な予算管理が難しくなったと感じる企業もあります。
    (具体例: 月初に予算の大部分が消化されてしまい、月の後半に広告が出稿できなくなった飲食チェーン)
  • 運用のブラックボックス化
    AIによる自動調整のため、なぜそのクリック単価になったのか、どのような要素が評価されているのかが以前よりも見えにくくなりました。これにより、運用改善のための具体的な手がかりを見つけにくいと感じる担当者もいます。
    (具体例: 応募数が急減した際に、何が原因か特定するのに時間がかかった人事担当者)

メリットと捉える声も

一方で、手動運用の手間が省け、IndeedのAIが最適な調整を行うことで、結果的に応募獲得効率が向上したというポジティブな声も存在します。特に、Indeed運用にリソースを割けない中小企業や、専門知識を持たない担当者にとっては、運用が簡素化されるメリットは大きいと言えます。

新しいIndeed運用戦略 – 予算管理と目標達成のために

Indeedの自動運用時代において、予算を効率的に使い、採用目標を達成するためには、従来の「単価調整」から「根本的な最適化」へと戦略をシフトする必要があります。

1. 求人情報の質を徹底的に高める

AIが応募を最大化する上で最も重視するのは、求人情報の「質」と「求職者との関連性」です。単価調整ができない今、ここに投資することが費用対効果を高める唯一の方法です。
職務内容、必要なスキル、給与、福利厚生などを具体的かつ魅力的に記載し、求職者の検索キーワードとの合致度を高めましょう。また、企業の文化や働くやりがいを伝えることで、クリック率(CTR)と応募率(CVR)の向上が期待できます。
(具体例: 応募者の興味を引くキャッチコピーの追加、動画での職場紹介、社員インタビューの掲載)

2. Indeedの新しい運用タイプを使いこなす

4つの新しい運用タイプ(バランス型、応募数最大化型、目標応募数重視型、目標応募単価重視型)を自社の採用状況や目標に合わせて適切に選択・設定することが重要です。
例えば、緊急で多くの応募が必要な場合は「応募数最大化型」、予算効率を重視する場合は「目標応募単価重視型」を検討するなど、キャンペーンの目的と設定を細かく見直しましょう
(具体例: 複数の求人がある場合、人気求人には「応募数最大化型」、採用難易度の高い求人には「目標応募単価重視型」を適用)

3. 予算のモニタリングと柔軟な見直し

手動での単価調整ができない分、日々の予算消化状況をより注意深くモニタリングする必要があります。Indeedの管理画面で、クリック数、応募数、CPAなどの推移を定期的に確認し、予算が想定以上に消化されている場合は、早めに日額予算の上限を見直すなどの対策を取りましょう。
また、効果の低い求人への予算配分を見直し、効果の高い求人へ集中させるなど、柔軟な予算配分を行うことも重要ですいです。
(具体例: 週次で予算消化レポートを作成し、応募単価が著しく高い求人は一時停止を検討する)

4. 採用サイトの改善とIndeedエントリーへの対応

Indeedは、2025年6月30日をもって原則クローリング(企業の採用サイトを巡回して求人情報を自動で取り込む仕組み)を終了し、「Indeedエントリー」を標準化すると発表しています。これは、求職者がIndeed上で直接応募を完結できる仕組みです。
企業は、自社の採用サイトのUI/UX改善に加え、Indeedエントリーへの対応を確実に進める必要があります。応募プロセスの簡素化は、求職者の離脱を防ぎ、応募率向上に直結します。 (具体例: Indeedエントリーの導入、採用サイトの入力フォームの最適化、モバイルからの応募のしやすさの確認)

5. 専門代理店の活用を検討する

Indeedの運用は専門性が高まっており、自社での運用が難しいと感じる場合は、Indeedの運用代行を行う専門代理店の活用を検討するのも有効な手段です。
代理店は最新のアルゴリズムや運用ノウハウを持っており、費用対効果を最大化するための戦略立案や調整を代行してくれます。これにより、自社のリソースを他の採用活動やコア業務に集中させることができます。
(具体例: Indeed運用実績が豊富な代理店に相談し、自社の採用課題に合わせた提案を受ける)

Indeed変化の時代における採用成功の鍵

Indeedのクリック単価モデルの変更は、企業にとって「運用が楽になる」という側面がある一方で、「費用が増加するのではないか」「コントロールが効かなくなるのではないか」という不安をもたらしました。特に手動入札で細かく予算を管理していた企業にとっては、大きな転換点と言えるでしょう。

しかし、この変化は、Indeedが企業に対して、より本質的な「求人情報の質」や「採用プロセスの最適化」に注力することを求めていると捉えることもできます。単価競争から、求職者にとって価値のある情報提供へと軸足を移すことで、結果的にマッチングの質を高め、長期的な採用成功に繋がるというIndeed側の意図が背景にあると考えられます。

このレポートを読んだあなたが、Indeedを活用して採用を成功させるためには、以下の現状と課題、そして対策を再確認してください。

  • 現状 – 自動化されたIndeed運用
    Indeedは手動入札を廃止し、AIによる自動運用へ完全に移行。企業は4つの運用タイプから選択し、予算配分や単価調整はAIに委ねられる。
  • 課題 – 費用高騰とコントロールの難しさ
    自動化によるクリック単価・応募単価の高騰、予算消化スピードの予測困難化、運用がブラックボックス化するといった懸念。特に競争の激しい職種では顕著。
  • 対策 – 本質的な最適化と戦略的運用
    求人情報の質を徹底的に高め、Indeedの運用タイプを適切に使いこなす。予算はこまめにモニタリングし、柔軟に見直す。採用サイトの改善とIndeedエントリーへの対応を確実に進める。必要に応じて専門代理店の活用を検討し、自社のリソースを最大限に活かす。
Indeedのクリック単価モデルの変更は、企業に新たな採用戦略の転換を促すものです。
もはや「単価をいかに抑えるか」ではなく、「求人情報の魅力度」と「採用プロセスの最適化」に徹底的に注力することが、予算を有効活用し、優秀な人材を獲得する上での最も重要な鍵となるでしょう。
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