採用成功の鍵は「不採用」にあり?危険な人材の見極めポイント
「人手不足だから、とにかく早く採用したい…」
「でも、せっかく採用するなら、長く活躍してくれる人に来てほしい」――
採用活動において、多くの企業がこのジレンマに直面しています。特に人手不足が深刻な状況では、焦りから採用基準を緩めてしまいがちですが、見極めを誤った「変な人」の採用は、企業にとって大きなリスクとなり得ます。
入社後に問題を起こす人材は、既存社員の負担を増やすだけでなく、チームの士気を下げ、結果的に退職者を増やすリスクさえあります。採用を頑張って人員を増やしても、根本的な問題解決には繋がりません。
本記事では、このような事態を避けるため、一見すると良さそうに見えても注意すべき「問題を起こす可能性のある人」のパターンと、慎重に、冷静に採用判断をするための見極めポイントを、経歴、面接時の受け答え、その他の行動・態度から詳しく解説します。
採用の落とし穴:見極めを誤ると「負の連鎖」が始まる
人手不足だからといって、安易な採用に踏み切ることは非常に危険です。不適切な人材を採用してしまった場合、企業は以下のような大きなコストとリスクを負うことになります。
問題人材採用のリスクとコスト
金銭的コスト
採用費、研修費、給与といった直接的な費用が無駄になります。さらに、解雇に至った場合のコストも発生します。
時間的コスト
採用プロセスにかかった時間だけでなく、入社後の教育・指導にかかる時間、問題解決のための時間も無駄になります。
既存社員への負担増
「変な人」は仕事ができないだけでなく、周囲に悪影響を与え、既存の真面目な社員の業務負担や精神的負担を増やします。結果的に、既存社員の離職リスクを高める「負の連鎖」を引き起こしかねません。
生産性・士気の低下
チームワークが乱れ、問題解決に時間が割かれることで、組織全体の生産性や士気が低下します。
人手不足は解決したいけれど、「変な人」を採用すると、頑張ってくれている他のスタッフの負担は増えるだけで、むしろ退職者が増えるリスクもあります。入社後、不適切な人材を辞めさせるのは非常に大変な労力を要するため、採用判断は慎重に、冷静に行う必要があります。
経歴書・職務経歴書から見抜くサイン
応募書類は、求職者の情報整理能力や仕事への向き合い方を測る最初の機会です。以下のような傾向がないか、注意深く確認しましょう。
要注意な経歴書・職務経歴書のサイン
短期間での転職繰り返し
2~3年おきに転職を繰り返している場合、何かしら問題がある可能性があります。転職理由が曖昧だったり、常に他責にしている場合は要注意です。
職務内容の抽象性・誇張
具体的な業務内容や成果ではなく、一般的な表現に終始している。または、実績が過度に誇張されていると感じられる場合、実力と乖離があるかもしれません。
転職理由の一貫性のなさ
応募する企業ごとに転職理由が変わる、または面接で話す内容と矛盾がある場合、自己分析が不足しているか、本音を隠している可能性があります。
前職の不満ばかり述べる
前職への不満ばかりで、具体的な課題解決への貢献や自身の成長について語れない場合、環境への適応力や主体性に課題があるかもしれません。
応募書類の不備・誤字脱字
基本的な誤字脱字が多い、フォーマットが崩れているなど、注意力や仕事への丁寧さに欠ける可能性があります。
面接時の受け答えから見極めるポイント
面接は、求職者の本質的な部分を見抜く最も重要な機会です。受け答えの端々から、思考性や人柄を探りましょう。
要注意な面接時のサイン(「問題人材」の傾向)
質問の意図を理解しない・一方的
質問に対し的外れな回答をしたり、自分の言いたいことだけを話し続けたりする場合、コミュニケーション能力や傾聴力、質問を理解する論理力の欠如があるかもしれません。
他責思考・批判ばかり
成功体験は自分の手柄、失敗は他人のせい・環境のせいにする傾向がある場合、協調性や問題解決能力に不安があります。
嘘や誇張の疑い
話の辻褄が合わない、具体的な数字やエピソードを求めると口ごもるといった場合、経歴詐称や過度な自己アピールの可能性があります。
企業への興味が薄い・準備不足
企業研究が不足している、応募動機が抽象的、逆質問がない(または定型的)場合、入社意欲が低いか、どの会社でも良いと考えている可能性があります。
見極めるためのポジティブなサイン(「良い人材」の傾向)
論理的な思考・具体例
質問に対し、結論から話し、具体的なエピソードや数字を交えて論理的に説明できる。
自責・改善志向
失敗から学び、次に活かそうとする姿勢が見られる。困難な状況を他責にせず、自分にできることを考える。
企業への深い理解と具体的な質問
企業文化や事業内容への深い理解を示し、自身のキャリアと会社の将来を関連付けた具体的な質問ができる。
安定感と継続力
一貫したキャリアパスや長期的な視点でのキャリア形成意欲が見られる。困難な状況でも粘り強く取り組んだ経験を具体的に語れる。短期間での転職が少なく、一つの場所で継続的に貢献してきた実績がある。
その他の行動・態度から見抜くサイン
書類や面接での受け答えだけでなく、応募から選考中の細かな行動にも、求職者の本質が現れます。
要注意な行動・態度のサイン
連絡へのレスポンスの遅さ
メールや電話への折り返しが極端に遅い、連絡が滞りがちといった場合、入社後の業務においてもルーズである可能性があります。
遅刻・時間管理のルーズさ
面接への遅刻が常態化している、アポイントの変更が多いなど、時間管理能力に問題がある可能性があります。
TPOに合わない服装・態度
面接の場にそぐわない服装や、礼儀に欠ける態度が見られる場合、基本的なビジネスマナーや常識が不足している可能性があります。
圧迫面接でもないのに不機嫌
通常の面接にも関わらず、少し深掘りされたり、自身の苦手な部分に触れられたりすると、すぐに不機嫌になる、態度が硬化するといった場合、ストレス耐性や感情コントロールに課題があるかもしれません。
冷静な採用判断のための心構え
上記で述べたサインは、あくまで「その傾向がある」という参考情報です。しかし、人手不足のプレッシャーの中で見落とされがちな重要なヒントでもあります。
採用判断で意識すべきこと
複数名での面接・評価
一人の印象に左右されず、複数の面接官が多角的に評価することで、見極めの精度が高まります。採用担当者だけでなく、現場の社員も面接に参加させるのが理想です。
構造化面接の導入
事前に質問項目や評価基準を明確にし、全ての候補者に同じ質問をすることで、比較しやすく、客観的な評価が可能になります。
リファレンスチェックの実施
可能であれば、候補者の前職での上司や同僚から、実際の働きぶりや人柄について意見を聞くリファレンスチェックも有効です。
「急いで採用」の罠を避ける
人手不足のプレッシャーから、「誰でもいいから」と採用に踏み切るのは最も危険な行動です。一時的な業務負荷増よりも、問題人材による長期的な組織への悪影響の方がはるかに大きいことを肝に銘じましょう。
「変な人」を一度採用してしまうと、後から辞めさせるのは非常に大変な労力を要します。採用は企業の未来を左右する重要な決断です。焦らず、慎重に、そして冷静に判断を下すことが、結果的に企業の成長と既存社員を守ることに繋がります。
まとめ:慎重な見極めが企業を守る
人手不足に悩む企業にとって、新しい人材の採用は喫緊の課題です。しかし、そのプレッシャーの中で採用判断を急ぐと、企業にとって有害な「問題人材」を採用してしまうリスクが高まります。
経歴書や面接時の受け答え、そして細かな行動のサインを見逃さず、客観的かつ多角的な視点から候補者を見極めることが重要です。一見すると良さそうに見えても、その裏に隠れた傾向を察知し、冷静に採用を見送る勇気も必要となります。
「採用は投資」という言葉の通り、その投資の質は企業の未来を左右します。慎重な見極めこそが、既存のチームを守り、健全な企業文化を育み、最終的に企業全体の生産性と成長に繋がる最も確実な道なのです。