「営業 東京」とGoogleで検索した際に、検索結果の上部に表示される青い枠の求人情報リスト。これが「Googleしごと検索(Google for Jobs)」です。今や多くの求職者にとって、仕事探しの最初の入り口となっています。
しかし、多くの採用担当者が「どうすればあそこに自社の求人が掲載されるのか」「どうすればもっと上位に表示されるのか」という疑問を抱えています。本記事では、Googleしごと検索の基本的な仕組みから、掲載のために必要な準備、そして上位表示を勝ち取るための秘訣まで、網羅的に解説します。
1. Googleしごと検索の仕組みと役割
まず理解すべき最も重要な点は、Googleしごと検索は、企業が直接求人を投稿する「求人サイト」ではないということです。その正体は、ウェブ上に存在するあらゆる求人情報を、Googleが自動的に見つけ出し、整理・集約して表示する「求人情報の検索エンジン」です。
近年、Googleは検索結果画面に「画像」「ニュース」「マップ」と並んで「求人」という専用タブを設けるなど、仕事探しを検索エンジンの中核機能として本格的に位置づけ始めています。この流れは、今後ますます加速するでしょう。
役割分担の理解が重要
Googleの役割はあくまで求職者を最適な情報へ送り出す「巨大なハブ(入口)」です。一方で、応募の「受け皿」となる求人ページや応募フォームを用意するのは、企業の役割です。下の図で、誰がどこを担当するのかを明確に理解しましょう。
① Googleの役割 (自動処理)
世界中のサイトから求人情報を発見
求職者の検索に合わせ最適な求人を提示
② 企業の役割 (要準備)
自社サイトや求人媒体上に、求人情報を掲載
応募受付と、その後の選考を管理
このように、Googleしごと検索に掲載されることはゴールではありません。そこから遷移してくる求職者を迎えるための、魅力的で応募しやすい求人情報ページ(受け皿)と、スムーズな応募受付の仕組みを、企業側がきちんと用意しておく必要があります。
2. どうすれば掲載される? – 必須となる「構造化データ」の準備
Googleのクローラーに自社の求人情報を正しく「これは求人情報です」と認識してもらうために、絶対に必要なものが「構造化データ」です。これは、ウェブページの情報を、機械が理解しやすいように意味付け(タグ付け)する技術です。
掲載されるための2つの方法
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方法1:自社採用サイトに構造化データを実装する(上級者向け)
自社の採用ページのHTMLに、「schema.org」という規格に沿った「JobPosting」の構造化データ(JSON-LD形式が推奨)を記述します。これにより、Googleのクローラーは、職種名、給与、勤務地といった情報を正確に読み取ることができます。技術的な専門知識が必要なため、ウェブ開発チームとの連携が不可欠です。 -
方法2:対応する求人サイトや採用管理システム(ATS)を利用する(推奨)
最も簡単で確実な方法です。求人ボックス、doda、リクナビNEXTといった主要な求人サイトや、Googleしごと検索に対応した採用管理システム(ATS)に求人を掲載すれば、これらのサービスが自動的に適切な構造化データを付与してくれます。そのため、特別な技術対応なしで、自社の求人がGoogleしごと検索に掲載される対象となります。
3. 上位表示の秘訣 – 評価の本質は「ちゃんとした求人」を「ちゃんとしたサイト」に載せること
GoogleのAIに高く評価され、上位表示を狙うための秘訣は、小手先のテクニックではありません。本質は極めてシンプルで、「求職者のためのちゃんとした求人情報」を、「技術的にちゃんとしたウェブサイト」に掲載し、Googleに接続することです。
「ちゃんとしたサイト」の条件とは?
まず大前提として、求人情報が掲載されているサイトそのものが、Googleの定める品質基準を満たしている必要があります。これは、求職者がストレスなく利用できるための基本的な要件です。
- 表示速度と応答性:サイトの読み込みが速く、PCでもスマートフォンでも快適に閲覧できること。
- 安全性:通信が暗号化(HTTPS化)されており、ユーザーの個人情報が守られること。
- 信頼性:スパムやウイルス、悪質な広告がなく、リンク切れなどもなく安定して表示されること。
「ちゃんとした求人情報」の条件とは?
同様に、掲載する求人情報の中身も「ちゃんとしている」必要があります。Googleは求職者の利益を最優先するため、誠実で透明性の高い情報を評価します。
- 情報の網羅性と具体性:具体的な給与額(例:「月給30万円~」)、詳細な勤務地住所、明確な職務内容、雇用形態など、必要な情報がすべて記載されていること。「詳細は面談にて」のような曖昧な表現は避けるべきです。
- 情報の鮮度と正確性:募集が終了した求人を載せ続けないこと。情報は常に最新かつ正確である必要があります。
- スパム的要素の排除:求職者を惹きつけるためだけの無関係なキーワードを詰め込んだり、実態と異なる職種名を使ったりしないこと。
結局のところ、GoogleのAIは「求職者にとって、最も有益で信頼できる情報源はどれか」を判断しています。ユーザーファーストを徹底し、誠実な情報発信をすることが、上位表示への一番の近道です。
4. 広告は存在するのか?
多くの担当者が抱く疑問が「お金を払って上位表示できないのか?」という点です。これには明確な答えがあります。
直接的な広告枠は「存在しない」
2025年現在、Googleしごと検索の青い枠の中に、直接的な「広告枠」や「スポンサー枠」は存在しません。表示順位は、あくまで前述したアルゴリズムによって、オーガニック(自然検索)に決定されます。
間接的に露出を増やす「裏技的」な方法
しかし、間接的に有料で露出を増やす、いわば「裏技的」な方法は存在します。それは、「Googleしごと検索で既に上位表示されている求人メディアの、有料広告枠を買う」という戦略です。
- まず、自社が狙うキーワード(例:「エンジニア リモート」)で実際にGoogle検索し、Googleしごと検索の枠内にどの求人サイト(求人ボックス、dodaなど)の求人が多く表示されるかを確認します。
- 次に、その上位表示されている求人サイトに出稿し、サイト内での「スポンサー枠」などの有料広告を利用します。
Googleが信頼し、高く評価しているサイト内で自社の求人が目立つようになれば、結果的にGoogleしごと検索のユーザーの目に触れる機会も増えます。これは、いわば「強いメディアの力を借りて、間接的に上位表示を狙う」という、賢い広告戦略と言えるでしょう。
Googleしごと検索の登場により、採用活動は、旧来のSEOとは異なる新しいルールの上で行われるようになりました。その本質は、小手先の技術でアルゴリズムを欺くことではなく、求職者に対して、いかに誠実で、具体的で、価値ある情報を提供できるかという点に尽きます。
Googleはあくまで最強の「集客装置」です。その先にいる求職者の心を動かし、応募へと導くのは、企業の魅力的な求人情報そのものです。AI時代の採用競争は、より正直で、より透明性の高い企業が勝つように設計されているのです。