求人検索の主要な入り口であるGoogleしごと検索において、Indeedの求人表示に大きな変化が見られるようになりました。
かつては多くのIndeed求人がGoogleしごと検索の上位を占めていましたが、最近ではその表示数が減少している、という声が企業の間で高まっています。
本記事では、この変化が実際に起きているのかを客観的な事実と情報に基づき解説します。そして、この状況が企業にもたらす影響を分析し、採用活動を成功させるために企業がどのように考え、どのように行動すべきかを具体的に提言します。
Googleしごと検索とIndeedの連携の変化
Googleしごと検索は、Google検索の結果ページに直接求人情報を表示するサービスであり、Indeedを含む多数の求人サイトや企業の採用ページから情報を収集しています。以前はIndeedからの求人情報がGoogleしごと検索の検索結果において大きな割合を占めていましたが、近年、その状況に変化が生じています。
Indeedの「クローリング終了」と「Indeedエントリー標準化」
Indeedは、2025年6月30日をもって原則として企業の採用サイトからの求人情報クローリングを終了し、求人投稿方法を「Indeedへの直接投稿」または「求人情報連携(API連携など)」に限定すると発表しました。
さらに、求職者がIndeed上で直接応募を完結できる「Indeedエントリー」を標準化する方針も示しています。
このIndeed側の仕様変更は、Googleしごと検索におけるIndeed求人の表示状況に大きな影響を与えています。
Googleしごと検索は、ウェブ上の構造化データを読み取って求人情報を表示するため、Indeedのクローリング対象外となった求人情報は、Googleしごと検索にもほぼ表示が確認できなくなってきている状況と考えられます。
※本グラフはGoogleしごと検索におけるIndeed求人表示の概念的な変化を示すものであり、実際の比率を保証するものではありません。
この変化が企業にもたらす影響と反応
Indeedの仕様変更は、多くの企業、特にIndeedを主要な採用チャネルとしていた企業に具体的な影響を与えています。
企業側の反応 – 「Indeedからの流入が減った」の声
ネット上では、Indeedの仕様変更以前から、Googleしごと検索経由でのIndeed求人の表示が減少しているという企業側の声が散見されます。特に、Indeedの無料掲載に頼っていた企業や、自社サイトのクローリングに依存していた企業からは、「Indeedからの応募数が減った」「Googleしごと検索で見つけにくくなった」といった懸念が表明されています。
これは、Indeedが「Indeedに直接投稿された求人」を優先する方針を強化していることや、クローリングの精度や頻度が調整されていることなどが影響している可能性があります。
採用活動への具体的な影響
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Indeedからの応募数減少
Googleしごと検索からのIndeedへの流入が減少することで、Indeed経由での応募数全体が減少する可能性があります。これにより、採用目標の達成が難しくなる企業が出てくるでしょう。 -
採用コストの増加
Indeed以外の採用チャネルを強化する必要が生じることで、求人広告費用や人材紹介手数料など、採用コスト全体が増加する可能性があります。 -
採用担当者の業務負担増
複数の求人チャネルを管理したり、自社採用サイトの改善に取り組んだりすることで、採用担当者の業務負担が増加する可能性があります。
これらの影響は、特にIndeedに採用活動の大部分を依存していた企業にとって、大きな課題となるでしょう。
Indeed運営コストの上昇とその利用者への影響
Indeedのビジネスモデルは、無料掲載と有料広告(スポンサー求人)を組み合わせることで、多くの求人情報を集め、求職者を引きつけることに成功してきました。このエコシステムの中で、Googleしごと検索による無料の求人表示は、Indeedにとっても重要な集客チャネルの一つでした。
Googleからの「無料」流入の減少
Indeedの求人情報がGoogleしごと検索に自動的に表示されることで、Indeedは追加のマーケティング費用をかけることなく、広範な求職者層にリーチすることができていました。しかし、Googleが自社のしごと検索機能を強化し、直接求人情報を取り込む仕組みを優先するようになったこと、そしてIndeed自身がクローリングを原則終了する方針を打ち出したことで、この「無料の集客チャネル」からの流入が減少しています。
Indeedの運営コスト増と企業への転嫁
Googleからの無料流入が減るということは、Indeedがこれまで無料で獲得できていた求職者を集めるために、より多くの自社マーケティング費用(例えば、テレビCM、オンライン広告、SEO対策など)を投じる必要が生じることを意味します。
これらの運営コストの上昇は、Indeedの収益構造に直接影響を与えます。そして、企業がIndeedの有料広告に支払う料金は、Indeedの運営を支える主要な収益源であるため、最終的にこのコスト上昇は、Indeedを利用する企業への費用負担増として転嫁される可能性が高いと考えられます。
実際に、前回の記事でも触れた通り、Indeedのクリック単価(CPC)は2023年4月の手動入札廃止後、1.5倍から2.5倍に高騰したという企業の声が多く聞かれます。この高騰は、Indeedのアルゴリズム変更だけでなく、このような運営コストの増加傾向も一因となっている可能性が示唆されます。
Indeedがより多くの費用を投じて集客を行う必要がある以上、有料広告の単価や総費用がさらに上昇する可能性は十分にあります。企業は、これまで以上に「費用対効果」を厳しく見極め、Indeed以外のチャネルも戦略的に活用する「多角的な採用戦略」が求められるでしょう。
1. IndeedがGoogleからの無料流入を失う/減少
2. Indeedの自社集客コストが増大
3. 増加した運営コストを利用企業へ転嫁
4. Indeed有料広告の単価・総費用が上昇
採用を成功させるための新戦略
Googleしごと検索とIndeedの連携の変化は、企業に採用戦略の見直しを強く促しています。特定のチャネルに依存せず、多角的なアプローチで採用力を高めることが不可欠です。
1. 自社採用サイトのSEO強化と構造化データの実装
Googleしごと検索に直接求人情報を表示させるためには、自社採用サイトが重要な役割を担います。求人情報に「JobPosting」などの構造化データを正確に記述し、Googleのクローラーが情報を適切に読み取れるようにすることが必須です。また、採用サイト自体のSEO対策(キーワード最適化、表示速度改善、モバイルフレンドリー化など)を強化し、検索エンジンからの直接流入を増やす努力をしましょう。
(具体例: 採用サイトの各求人ページにJobPostingスキーマを導入し、Google Search Consoleでエラーがないか確認する)
2. 採用チャネルの多角化とポートフォリオ戦略
Indeedへの依存度を下げ、複数の採用チャネルを効果的に組み合わせる「ポートフォリオ戦略」が重要です。具体的には、以下のようなチャネルを検討しましょう。
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主要求人媒体(リクナビNEXT、マイナビ転職など)の活用
幅広い層にリーチできる大手求人媒体は、依然として有効な選択肢です。 -
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SNS採用(ダイレクトリクルーティング)
LinkedIn、X(旧Twitter)、Facebookなどを活用し、企業が直接候補者にアプローチする手法。潜在層へのリーチや、企業文化の発信に有効です。 -
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人材紹介サービスの活用
専門性の高い職種や、即戦力となる人材の採用に有効です。信頼できる人材紹介会社を選定し、密に連携を取りましょう。 -
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社員紹介(リファラル採用)
既存社員からの紹介は、定着率が高く、採用コストも抑えられる傾向があります。社内制度の整備やインセンティブの導入を検討しましょう。
3. 採用ブランディングと企業魅力の発信
求職者が「この企業で働きたい」と感じるような魅力的な情報発信を強化しましょう。採用サイトだけでなく、SNS、オウンドメディア、社員インタビューなどを通じて、企業のビジョン、文化、働く人々のリアルな声、福利厚生などを具体的に伝えることが重要です。
(具体例: YouTubeでオフィスツアー動画を公開、採用担当者が積極的にSNSで情報発信を行う)
4. 求職者体験(Candidate Experience)の向上
応募から選考、内定、入社に至るまでの求職者体験を最適化しましょう。応募フォームの簡素化、選考プロセスの迅速化、丁寧なコミュニケーション、適切なフィードバックなどは、求職者の企業に対する印象を大きく左右し、採用決定率や入社後の定着率にも影響します。
(具体例: 応募から一次面接までを3営業日以内に設定、面接後の合否連絡を期日通りに行う)
採用成功へのロードマップ
Googleしごと検索におけるIndeedの求人表示の変化は、日本の採用市場における「プラットフォーム依存からの脱却」の必要性を示唆しています。これまでIndeedに大きく依存していた企業は、この変化を脅威と捉えるかもしれませんが、同時に自社の採用力を根本から見直す好機でもあります。
特定のプラットフォームの仕様変更に一喜一憂するのではなく、いかに自社が「選ばれる企業」となるか、そして求職者との接点を多角的に増やせるかが、今後の採用成功を左右します。
このレポートを読んだあなたが、人材採用を成功させるためのロードマップとして、以下の現状と課題、そして具体的な対策を再確認してください。
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現状 – GoogleとIndeedの変化
Googleしごと検索でのIndeed求人の表示が減少傾向にあり、Indeedもクローリングを終了し直接投稿・API連携を標準化する方針。これにより、特定のプラットフォームに依存した採用戦略のリスクが顕在化している。 -
課題 – 流入減少と採用力低下のリスク
Indeedからの応募数減少、採用コストの増加、採用担当者の業務負担増といった具体的な問題が発生。自社採用サイトのSEO対策不足や、多角的な採用チャネルの運用ノウハウの不足が課題。 -
対策 – 採用力の多角化と内製化の推進
自社採用サイトのSEO強化と構造化データ実装を最優先で行う。 Indeed以外の主要求人媒体、SNS採用、人材紹介、社員紹介など、複数のチャネルを組み合わせたポートフォリオ戦略を構築する。採用ブランディングを強化し、求職者体験を向上させる。
採用活動の未来は、特定のプラットフォームに依存するのではなく、企業が自らの手で「採用力」を総合的に高めることにかかっています。
この変化を好機と捉え、戦略的な投資と継続的な改善を行う企業こそが、人材獲得競争を勝ち抜き、持続的な成長を実現するでしょう。