「Webで求人を出しているが、Googleに表示されない…」「掲載はされても、全く応募に繋がらない…」Googleしごと検索は、無料で使える強力な採用チャネルですが、その仕組みは複雑です。
本記事では、Googleに求人を掲載するための必須条件・推奨条件を詳しく解説。さらに、ライバルに差をつけるための「良い求人票・悪い求人票」の具体例を比較しながら、上位表示を勝ち取るための実践的なアクションを徹底ガイドします。
① Googleしごと検索の仕組みと「構造化データ」
まず理解すべきは、Googleしごと検索は「求人サイト」ではないということです。これは、世界中のWebサイトから求人情報を自動的に収集し、ユーザーに分かりやすく提示する「検索機能」の一つです。
そして、自社の求人情報をGoogleに「これは求人情報ですよ」と正しく認識させるための”共通言語”が、「構造化データ(schema.orgのJobPosting)」です。この専門的なデータを採用ページに記述することが、Googleしごと検索に掲載されるための、唯一にして絶対の条件となります。
「掲載されない」求人や「評価が下がる」求人には共通点があります。Googleは、求職者にとって不利益な情報、不正確な情報、あるいは技術的に読み取れない情報を排除します。具体的には、求人情報の曖昧さ(給与が不明確、仕事内容が不明瞭)、コンテンツの重複、誤解を招く表現、そしてウェブサイトの品質問題(表示速度が遅い、モバイル対応していない、セキュリティが不十分など)が挙げられます。これらがGoogleの掲載ガイドラインに違反する場合、検索結果に表示されなかったり、大きく順位を下げられたりします。
② 構造化データの必須・推奨プロパティ詳細
構造化データには様々な項目(プロパティ)がありますが、特に重要なものを「必須」と「推奨」に分けて解説します。推奨項目をどれだけ充実させるかが、上位表示の鍵を握ります。
必須プロパティ(最低限これだけは必要)
datePosted
:求人の掲載日。この日付が新しいほど、求職者にとってもGoogleにとっても価値が高いと判断されます。description
:職務内容。仕事の具体的な内容、責任、資格などをHTML形式で詳しく記述します。hiringOrganization
:募集元の組織情報。会社名、ウェブサイトなどを正確に記載し、信頼性を示します。jobLocation
:勤務地。市区町村レベルまで、できるだけ正確な住所を記載します。リモートワークの場合は設定が異なります。title
:職種名。求職者が検索で使うであろう、具体的で分かりやすい名称を設定します。validThrough
:求人の有効期限。この日付を過ぎると、求人は表示されなくなります。
推奨プロパティ(上位表示に極めて重要)
baseSalary
:給与情報。最も重要な推奨項目です。具体的な給与額や範囲(例:月給30万円~45万円)を記載することで、求職者の関心を引き、Googleからの評価も格段に上がります。jobType
:雇用形態。FULL_TIME
(正社員)、PART_TIME
(パート)、CONTRACTOR
(契約社員)などを明記します。experienceRequirements
:経験要件。「営業経験3年以上」や「未経験者歓迎」など、求める経験を具体的に記述します。
③ 【初心者向け】求人をGoogleに掲載する3つの方法
専門知識が必要な構造化データですが、実装する方法は一つではありません。自社の状況に合わせて最適な手段を選びましょう。
方法1:対応済みの採用管理システム(ATS)や求人サイトを利用する(最も簡単)
多くの採用管理システム(ATS)や、Indeedなどの大手求人サイトは、求人情報を登録するだけで自動的にGoogle対応の構造化データを生成してくれます。専門知識がなくても、これらのサービスを利用すれば、手間なくGoogleに求人を掲載できます。
方法2:WordPress等のプラグインを活用する(やや簡単)
自社の採用サイトがWordPressで作られている場合、「All in One SEO Pack」や「Yoast SEO」といったSEO対策プラグインの機能を使えば、比較的簡単に構造化データを設置できます。多少の設定は必要ですが、開発者に依頼するよりは手軽です。
方法3:構造化データを手動で設置する(上級者向け)
開発者がいる場合や、より細かく情報をコントロールしたい場合は、JSON-LDという形式で構造化データを直接HTMLに記述します。Googleのガイドラインに沿って、必要なプロパティを漏れなく記述することが重要です。
④ 【中級者向け】上位表示を勝ち取るための求人票改善術
掲載されるだけでは意味がありません。数多の求人の中で上位に表示され、クリックしてもらうためには、求人票そのものの「質」を徹底的に磨き込む必要があります。
求人票の質を磨くことはもちろん重要ですが、求人情報を掲載しているウェブサイト自体の品質も、Googleしごと検索での上位表示に大きく影響します。Googleは求職者に対して最良の体験を提供したいと考えているため、求人サイトが高速に表示され、モバイルフレンドリーであり、安全な接続(HTTPS)を備えているかを重視します。これらのSEO的な要素が不足していると、いくら求人票の内容が良くても評価が下がってしまう可能性があります。求職者がスムーズに情報を得て応募まで進めるよう、サイト全体のユーザーエクスペリエンスを最適化することが不可欠です。
職種名(title)の具体性
NG悪い例
営業スタッフ募集
OK良い例
【港区勤務】法人向けITソリューションの提案営業(未経験歓迎)
悪い例は、漠然としすぎていて仕事内容が全く分かりません。良い例のように「勤務地」「顧客対象」「商材」「職務」「歓迎要件」などを盛り込むことで、求職者は一目で自分に関係ある求人か判断でき、クリック率の向上に繋がります。
職務内容(description)の魅力と透明性
NG悪い例
ノルマなし!風通しの良い職場で働きませんか?お客様から感謝される、やりがいのある仕事です。
OK良い例
【具体的な業務内容】
〇〇業界の中小企業様に対し、自社開発の勤怠管理システム『勤怠くん』の導入提案を行います。1日の訪問件数は平均3件。入社後3ヶ月間は先輩社員との同行研修があり、IT知識がなくても安心です。
【必須スキル】
・普通自動車免許
・基本的なPC操作スキル(Word, Excel)
悪い例は、どの会社でも言える精神論ばかりで、具体的な情報がありません。良い例のように「何を」「誰に」「どうやって」提供するのかを明確にし、研修制度など求職者の不安を解消する情報を盛り込むことで、応募へのハードルを下げることができます。
給与情報(baseSalary)の明確さ
NG悪い例
月給25万円以上 ※経験・能力を考慮の上、優遇します。
OK良い例
月給:300,000円~450,000円
(想定年収:450万円~650万円)
※上記金額には、固定残業代(月30時間分/58,000円~87,000円)を含みます。超過分は別途全額支給します。
悪い例は、上限が分からず、結局いくら貰えるのかが不透明です。良い例のように具体的な給与レンジ(下限と上限)を提示し、固定残業代についても内訳を明記することで、企業の透明性や誠実さが伝わり、求職者からの信頼を得られます。
⑤ 【実践編】明日から始める具体的なアクションプラン
理論を学んだら、次に行動です。自社の状況に合わせて、以下のプランを実行してみましょう。
これから始める方向け
- ✓自社の採用サイトが、利用しているシステムで構造化データに対応できるか調べる。
- ✓対応が難しい場合、Googleしごと検索への掲載機能がある採用管理システム(ATS)の導入を検討する。
- ✓手軽に始めるなら、Indeedなどの求人検索エンジンに求人を掲載し、そこからGoogleに表示されるのを待つ。
さらに上位を狙う方向け
- ✓Googleのリッチリザルトテストツールを使い、自社の求人ページに構造化データのエラーがないか確認する。
- ✓求人票を見直し、給与情報(範囲指定でOK)を必ず追記する。
- ✓募集要項の仕事内容をより具体的に書き直し、求職者が働く姿をイメージできるように改善する。
- ✓GoogleのPageSpeed Insightsでページの表示速度を計測し、遅い場合は開発者に改善を依頼する。
- ✓モバイルフレンドリーテストで自社サイトがスマートフォンで適切に表示されるか確認する。
- ✓HTTPS(SSL証明書)が導入されているか確認し、安全な接続を提供できているかチェックする。
- ✓Google Search Consoleを導入し、どの求人が、どんなキーワードで、どれくらい表示・クリックされているかを分析する。不必要なページのクロールを`robots.txt`で制限し、サイトマップで求人ページをGoogleに正しく伝える。
- ✓Core Web Vitals(LCP, FID, CLS)を意識し、サイトのユーザー体験を総合的に改善する。
Googleしごと検索の最適化は、一度行えば終わりではありません。
求人情報を常に最新の状態に保ち、データを分析し、改善を続ける。その地道な努力が、広告費に頼らない、持続可能な採用チャネルを育て上げるのです。