「大卒初任給は20万円程度」というかつての固定観念は、もはや完全に崩壊しました。2025年、2026年卒採用において、一部のトップ企業は月額換算で50万円、あるいは80万円を超える額を提示し、労働市場を震撼させています。
この初任給高騰の背景にあるのは、単なる物価高への配慮ではありません。世界水準の「高度専門人材」を確保するための投資判断であり、これに対応できない企業は、優秀な層から順に「選択肢から除外」される残酷なフェーズに入っています。
1. 衝撃の最新初任給・引き上げ企業一覧
注目企業の初任給データを一覧にまとめました。GMOインターネットグループのように、コースによって「59万円」と「83万円」を使い分け、多様な優秀層にアプローチする事例も出てきています。
| 社名・コース等 | 初任給(月額換算) | 年度・対象 | 出典・背景 |
|---|---|---|---|
| GMOインターネットグループ(AI人材枠) | 約 833,333円 | 26卒向け | 年収1,000万円プログラム(ニュース報道・公表資料) |
| GMOインターネットグループ(No.1枠) | 約 591,675円 | 26卒向け | 年収710万円プログラム(HRog調査) |
| 日本商業開発 | 約 475,000円 | 25卒向け | 高額レンジ企業として注目(CREX GROUP) |
| アマゾン ウェブ サービス ジャパン | 約 475,000円〜 | 25卒向け | 年俸制を月額換算したレンジ(CREX GROUP) |
| Rapidus(ラピダス) | 約 433,400円 | 26卒向け | 次世代半導体人材の確保(HRog) |
| エルガーホールディングス | 430,000円 | 26卒向け | 26卒ナビサイト掲載データ(HRog) |
| 大和ハウス工業 | 350,000円 | 25卒入社 | 25万→35万へ+10万円の衝撃的引き上げ(Edenred等) |
| SBIホールディングス | 340,000円 | 25卒入社 | 30万→34万へ4万円の引き上げ(セラク等) |
| ファーストリテイリング(ユニクロ) | 330,000円 | 25卒入社 | 大幅なベースアップ継続(東洋経済) |
| バンダイ | 305,000円 | 25卒入社 | 29万→30.5万に引き上げ(Business Insider) |
| ノジマ | 300,000円 | 25年度 | 現場手当込みで30万の大台へ(Edenred) |
| サントリー | 290,000円 | 25卒入社 | 大手飲料メーカーの賃上げ動向(Edenred) |
| モスフードサービス | 247,500円 | 25年入社 | 前年より7,500円増額(Business Insider) |
2. なぜ「50万・80万」が当たり前になりつつあるのか
この異常とも思える数字の背景には、日本の労働市場が抱える構造的課題が投影されています。
「新卒」に対する投資概念の逆転
かつての「安く雇って教育する」モデルから、「完成された能力に早期投資する」モデルへとシフトしています。特に月給80万円(年収1,000万円)クラスの募集は、AI、データサイエンス、グローバル金融といった「利益に直結する専門性」をターゲットにしています。こうした層は最初から「世界」が競合であり、日本国内の平均的な給与体系は通用しません。
「大手・人気企業」の基準が中堅企業の「天井」を突き抜ける
大和ハウス工業(35万円)やノジマ(30万円)のように、従来のイメージを超えて初任給を引き上げる企業が増えたことで、学生が感じる「最低ライン」が底上げされました。これにより、これまでは「そこそこの給与」で採用できていた中堅企業が、「給与で足切りされる」という深刻な事態に直面しています。
3. まとめ – 採用格差を突破するための現状・課題・対策
初任給高騰は一時的なトレンドではなく、労働人口減少とインフレが続く限り止まることはありません。
現状 – 「普通」がもはやリスクに変わった市場
月給20万円台前半は、今の学生の目には「変化を拒む古い企業」あるいは「成長の見込めない環境」と映るリスクがあります。給与額は単なる対価ではなく、その会社の「成長意欲」と「従業員への期待値」のバロメーターとなっています。
課題 – 全社的な賃金歪みと収益力の限界
初任給を上げること自体は簡単ですが、問題は「既存社員とのバランス」と「その原資をどう稼ぐか」です。給与を上げられない最大の原因は、商品・サービスへの「価格転嫁」が進まず、1人あたり生産性が停滞していることにあります。
対策 – 採用を成功させるための3つの処方箋
1. 「コース別採用」の導入 – 全員一律で給与を上げるのが難しい場合、特定の専門職や幹部候補に限定して「世界水準」の初任給を設定する二段階モデルを検討してください。
2. 1人あたり利益を軸にした収益改革 – 給与を「コスト」ではなく「攻めの投資」と捉え、高単価・高付加価値ビジネスへのシフトを加速させてください。賃上げは、経営モデルそのものをアップデートする契機です。
3. 「生涯市場価値」のコミットメント – 金額で勝負できない中小企業は、「うちで3年働けば、年収1,000万円で他社にスカウトされる力がつく」といった、個人のスキル資産を最大化させる育成環境を言語化し、徹底的にアピールしてください。
「代わりはいない」時代の採用に、聖域はありません。
トップ企業の「月給80万円」という数字を他山の石とせず、自社の価値提供のあり方をゼロから見直す。その勇気を持つ企業だけが、2030年への競争を勝ち抜くことができます。

