グローバル化が進む現代において、企業が優秀な人材を確保するためには、世界の給与水準を正確に把握することが不可欠です。特に、日本の平均年収が主要先進国の中で相対的に低下している現状は、外国人採用における競争力の低下という形で表れています。
本記事では、OECD(経済協力開発機構)などの公的機関の最新データに基づき、世界の主要国の平均年収と推移を比較し、これからの外国人採用戦略をどう構築すべきか、具体的な準備と論点を提示します。
1. 世界の主要国 平均年収の現状(OECDデータに基づく)
OECDが公表しているデータ(2023年時点、市場為替レート USD建て)を参照すると、日本の平均賃金はOECD加盟国の中で中位以下に位置しており、特に欧米諸国との差が顕著です。
世界の平均年収ランキング(USD建て)
| 順位 | 国名 | 平均年収(USドル目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1位 | スイス | 約110,000ドル | 金融、高付加価値産業が中心 |
| 2位 | ルクセンブルク | 約95,000ドル | 高水準の賃金と低い税率 |
| 3位 | 米国 | 約83,000ドル | 賃金格差が大きいが、高スキル層の報酬は極めて高い |
| 5位 | オランダ | 約72,000ドル | EU域内で高水準を維持 |
| 8位 | オーストラリア | 約65,000ドル | 資源産業とサービス業が牽引 |
| 12位 | カナダ | 約58,000ドル | OECD平均水準 |
| 15位 | ドイツ | 約54,000ドル | 製造業が強く安定した高水準 |
| 22位 | 韓国 | 約35,000ドル | 近年、賃金上昇率が急速に高い |
| 23位 | 日本 | 約33,000ドル | OECD加盟国の中で中位以下に位置(データ年次により変動) |
出典: OECD 2023年 平均賃金(Average annual wages)データ(市場為替レート USD換算)に基づき作成
日本の平均賃金は、OECD加盟国38カ国中、23位前後に位置しており、特に欧米主要国や、近年賃金上昇が著しい韓国などと比較しても、その差は広がり続けています。
2. 年齢別・時間当たり賃金から見る国際比較
国ごとの賃金構造を理解するためには、平均年収だけでなく、「年齢別」のピークや「時間当たり」の賃金を見る必要があります。
年齢別賃金の比較と構造(JILPTデータに基づく)
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日本の特徴
日本は伝統的に年功序列の影響が強く、賃金のピークが50代前半にあります。若年層(20~30代)の賃金は比較的低い水準でスタートし、年齢と共に上昇する傾向が顕著です。
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欧米の特徴
米国や欧州諸国では、若いうちから能力や職務内容に基づいた報酬(ジョブ型)が採用されることが多いため、賃金のピークが早期に訪れる(例: 30代後半~40代前半)傾向があります。また、日本に比べて若年層の賃金水準が高く、キャリア初期から高い報酬を得るチャンスがあります。
時間当たり賃金の比較
労働政策研究・研修機構(JILPT)の「データブック国際労働比較2024」によると、2022年の時間当たり賃金(購買力平価換算)を日本を100.0とした場合、米国は125.8、ドイツは185.0となっています。これは、日本は年収だけでなく、時間単位で比較しても、主要国に比べて賃金水準が低いことを示しています。
3. 賃金の推移と外国人採用への影響
国際的な賃金比較において最も重要な論点は、過去30年間の賃金の伸び率です。
賃金推移の劇的な格差
OECDのデータによると、1991年の平均賃金を100とした場合、2022年までにOECD加盟国平均の賃金は約33%も上昇しています。しかし、同時期の日本の平均賃金の伸び率はわずか3%程度にとどまっています。この停滞が、「安い日本」というイメージを国際的に決定づけています。
外国人採用における課題
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採用ターゲットの激変
かつては日本と同等またはそれ以下の賃金水準だったアジア諸国や東欧諸国も、近年著しい経済成長により賃金が上昇しています。その結果、優秀な外国人材にとって、日本の給与水準は相対的に魅力のない水準になりつつあります。特に、高いスキルを持つIT人材やエンジニアにとって、米国や欧州だけでなく、自国の賃金と比較しても優位性が見出しにくくなっています。
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「賃金」以外の魅力を強化する必要性
賃金面で国際競争力が低下している以上、企業は待遇面以外の「非金銭的報酬」(ノン・フィナンシャル・リワード)を強化しなければ、外国人材の獲得は困難になります。
4. 外国人採用に向けた戦略的準備
日本の企業が優秀な外国人材を確保し続けるためには、従来の国内市場の賃金体系に固執せず、グローバルな競争を意識した戦略的な準備が不可欠です。
企業が取るべき具体的な準備
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ジョブ型報酬の導入とスキルへの対価
年齢や勤続年数ではなく、採用する外国人材の持つ「特定の専門スキル」に対して、国際的な水準に見合った報酬を設定する。国内の賃金体系とは切り離したグローバル水準の賃金テーブルを導入する必要があります。
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非金銭的報酬の最大化
「給与が低くても選ばれる理由」を明確にするため、「キャリアアップの機会」「最先端技術へのアクセス」「ワークライフバランスの柔軟性(リモートワーク)」「国際的な企業文化」といった企業の非金銭的魅力を言語化し、強化することが重要です。
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透明性の高い評価制度の確立
外国人材が納得して働くためには、年功序列的な曖昧さを排除し、評価基準と昇給・昇格のルールを明確に提示することが、定着率向上に直結します。
世界の給与水準の上昇と日本の停滞は、採用戦略の「パラダイムシフト」を要求しています。グローバル市場で戦うための報酬制度と企業文化の再構築が、未来の競争力を決定づけます。

