「毎月同じように求人広告費を使っているのに、応募数に大きな差が出る…」これは多くの採用担当者が抱える悩みです。その原因は、求職者の活動量の「波」。ここでは、同じ広告費でも出稿時期によって効果がどれだけ変わるのか、具体的なシミュレーションで解説します。
採用市場の「波」と広告効果の原則
詳細な時期は業界や職種で異なりますが、求職者の活動が活発になる「繁忙期」と、落ち着く「閑散期」が存在することは、すべての市場に共通する原則です。そして、求人広告の費用対効果は、市場にいる「アクティブな求職者の数」に大きく依存します。
つまり、市場に人が多ければ多いほど、同じ広告費でより多くの人に見てもらう機会が増え、結果として応募に繋がる確率が高まるのです。
【コストシミュレーション】繁忙期 vs 閑散期の広告効果
それでは、具体的な数値を使って、広告効果の違いを見ていきましょう。
設定条件
- 広告予算:1ヶ月あたり 30万円
- 広告クリック率(CTR):広告が表示された人数のうち、2%がクリックすると仮定
- 応募転換率(CVR):広告をクリックしてサイトを訪れた人のうち、5%が応募すると仮定
ケースA:求職者が多い「繁忙期」に広告を出した場合
市場にいるアクティブな求職者が10,000人と仮定します。
- 広告の表示人数:市場の50%に表示されたと仮定 → 5,000人
- サイトへの訪問者数:5,000人 × 2%(CTR) = 100人
- 応募者数:100人 × 5%(CVR) = 5名
- 応募単価(CPA):300,000円 ÷ 5名 = 60,000円
ケースB:求職者が少ない「閑散期」に広告を出した場合
市場にいるアクティブな求職者が、繁忙期の半分である5,000人に減少したと仮定します。
- 広告の表示人数:市場の50%に表示されたと仮定 → 2,500人
- サイトへの訪問者数:2,500人 × 2%(CTR) = 50人
- 応募者数:50人 × 5%(CVR) = 2.5名
- 応募単価(CPA):300,000円 ÷ 2.5名 = 120,000円
同じ30万円の広告費でも、
応募者数は 2倍、応募単価も 2倍 の差が生まれました。
シミュレーションから導く採用戦略
この結果から、私たちはどのような戦略を取るべきでしょうか。
1. 採用予算は「時期」で傾斜配分する
毎月均等に予算を割り振るのではなく、求職者が最も活発な時期に予算を厚く投下することで、年間の総応募者数を最大化し、全体の応募単価(CPA)を最適化できます。閑散期は広告費を抑え、その分を繁忙期に回すといった柔軟な予算管理が求められます。
2. 閑散期の役割を「準備期間」と再定義する
応募が少ない時期は、採用活動を止めるのではなく、次の繁忙期に備えるための絶好の仕込み期間と捉えましょう。求人票のキャッチコピーや仕事内容を魅力的にブラッシュアップする、採用サイトを改善する、過去の応募者(タレントプール)との関係を構築するなど、未来の成果に繋がる活動に集中すべきです。
3. CPA(応募単価)で広告効果を正しく評価する
単純な応募者数だけでなく、「1人あたりいくらかかったのか」というCPAを計測し続けることが重要です。これにより、どの時期の、どの媒体への広告出稿が最も効率的だったかを客観的に判断でき、次年度の予算配分の精度を高めることができます。
結論 – 採用は「いつ、いくら使うか」の戦略がすべて
採用市場には、求職者の活動量に明確な「波」があり、それは広告の費用対効果に直接影響する。
同じ広告費でも、出稿する「時期」を間違えるだけで、応募単価が2倍以上になるなど、効果が劇的に変わってしまう。非効率な時期にコストをかけ続けることは、大きな機会損失である。
採用活動を「年間を通したプロジェクト」として捉え、戦略的な予算配分を行う。市場が活発な繁忙期にリソースを集中させ、閑散期は次の波に備える準備期間と位置づける。このメリハリある活動こそが、コストを最適化し、採用成功へと繋がる最も賢明なアプローチです。