日本でもビジネスSNSとして定着しつつあるLinkedIn。単なる人脈作りや情報収集のツールとしてだけでなく、近年、専門職やハイクラス人材の採用を目指す企業にとって不可欠な「攻めの採用プラットフォーム」へと進化しています。本記事では、LinkedInが提供する採用機能、国内企業による具体的な活用事例、そしてIndeedなど他の採用メディアとの違いを、メリット・デメリットの両面から徹底解説します。
LinkedInで利用できる主な採用機能
LinkedInの採用ソリューションは、単なる求人広告の掲載にとどまりません。企業の魅力を伝え、潜在的な候補者に直接アプローチするための多角的な機能が用意されています。
1. LinkedIn Recruiter(ダイレクトソーシング)
LinkedIn採用の中核をなす、最も強力な機能です。全世界のユーザーデータベースから、スキル、職務経験、業種、学歴といった詳細な条件で候補者を検索し、転職潜在層(まだ積極的に転職活動をしていない優秀な人材)に直接「InMail」というスカウトメッセージを送ることができます。待ちの採用ではなく、企業側から能動的にアプローチする「ダイレクトソーシング」を実現します。
2. 求人掲載(Job Postings)
自社の求人情報をLinkedIn上に掲載する機能です。掲載された求人は、関連性の高いスキルや経験を持つユーザーのフィードに表示されたり、検索対象になったりします。特筆すべきは、候補者がプロフィール情報を使って数クリックで応募できる「Easy Apply」機能で、応募のハードルを大きく下げます。
3. 採用ページ(Career Pages)
企業の公式ページ内に、採用に特化した「採用ページ」を作成できます。ここでは、社員インタビューの動画や記事、企業文化を紹介する写真、福利厚生の情報などを自由に掲載し、求職者に自社の魅力を深く伝える「採用ブランディング」の拠点として機能します。
国内企業のLinkedIn採用・活用事例
海外では広く活用されているLinkedIn採用ですが、日本国内でも、特にグローバル展開を進める企業や、専門性の高いITエンジニアを求める企業を中心に活用が広がっています。
事例1:楽天グループ株式会社
楽天グループは、世界中から多様なバックグラウンドを持つITエンジニアやビジネスリーダーを採用するため、早くからLinkedInを戦略的に活用している代表的な企業です。LinkedInの公式事例報告によると、同社は「LinkedIn Recruiter」を駆使して、インドやヨーロッパなど、世界中のトップタレントに直接アプローチ。採用ページでは、ダイバーシティ豊かな企業文化や、社内公用語である英語での働きがいを発信し、グローバル企業としてのブランドイメージを確立。海外からの優秀な人材獲得に成功しています。
事例2:株式会社ファーストリテイリング
ユニクロやジーユーを展開する同社もまた、グローバルヘッドクォーター構想を推進する中で、世界各国の経営幹部候補や専門職人材の獲得にLinkedInを活用しています。同社の採用ページでは、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というミッションに共感する人材を惹きつけるための力強いコンテンツが展開されており、企業のビジョンにマッチした人材との接点を創出しています。
Indeedとの比較で見るメリット・デメリット
多くの企業が利用するIndeedと比較することで、LinkedIn採用の特性がより明確になります。
LinkedInの優れている点
- 潜在層へのアプローチ
最大の強み。転職市場に出てきていない優秀な人材を直接口説ける。 - 候補者の質と専門性
専門職、管理職、ITエンジニアなど、ホワイトカラー層のデータベースが豊富。 - 採用ブランディング
採用ページや投稿機能を通じて、企業の魅力を継続的に発信し、ファンを育てることができる。 - 経歴の信頼性
公開されたプロフィールであり、同僚や上司と繋がっているため、経歴の信憑性が比較的高い。
LinkedInの好ましくない点(注意点)
- 高コスト
「LinkedIn Recruiter」のライセンス料は高額で、Indeedのクリック課金広告に比べ初期投資が大きい。 - ユーザー層の偏り
ブルーカラー、アルバイト・パート、未経験者層の採用には不向き。Indeedの方が圧倒的に強い。 - 運用工数がかかる
候補者検索、スカウト文面の作成、返信対応など、専門の担当者による能動的な活動が不可欠。 - 文化的な壁
日本ではまだ、知らないリクルーターからの突然の連絡に抵抗を感じる人も少なくない。
結論として、LinkedInは「万能の採用ツール」ではありません。Indeedが幅広い職種で応募を「待つ」採用に強いのに対し、LinkedInは「専門職・ハイクラス層の候補者を、企業側から能動的に探し出し、口説き落とす」という、全く異なる採用戦略を実現するためのプラットフォームです。
その特性を理解し、採用したいターゲットに応じて適切なツールを選択すること。そして、LinkedInを選ぶのであれば、コストと工数をかけてでも採用ブランディングとダイレクトソーシングを徹底する覚悟を持つこと。それが、これからの採用競争を勝ち抜くための鍵となります。