「人手不足の介護現場で、外国人材の採用を検討しているが、何から始めれば良いか…」
「外国人の介護職は増えていると聞くけれど、実際のところどうなのか?」
超高齢社会の進展に伴い、介護人材の確保は日本にとって喫緊の課題です。その中で、外国人材は貴重な労働力として注目を集めています。しかし、その受け入れには特有の課題や制度があり、漠然とした不安を抱える介護施設も少なくありません。
本記事では、厚生労働省や出入国在留管理庁などの公的機関の調査結果に基づき、介護職における外国人労働者の現状、出身国、在留資格、資格取得の状況を詳細に解説します。さらに、外国人材の雇用を成功させるための具体的なフロー、税金や各種届出・申請といった公的手続き、そして彼らが長く安心して働ける職場環境づくりのポイントまでを徹底的に掘り下げます。
介護分野における外国人材受け入れの現状
日本の介護分野では、深刻な人手不足を背景に外国人材の受け入れが積極的に進められています。厚生労働省の発表(※1)によると、介護分野で働く外国人材の数は年々増加しており、2023年10月末時点で約9万3千人に達しています。これは、2019年の約2万6千人から約3.5倍の増加です。
主な出身国としては、ベトナム、中国、フィリピン、インドネシアなどが多くを占めており、特にアジア諸国からの受け入れが活発です。
現状の主な特徴
外国人材は日本の介護現場にとって不可欠な存在となりつつありますが、彼らが安心して働き、能力を発揮できる環境を整備することが、今後の持続的な受け入れの鍵となります。
※1:厚生労働省「介護分野における外国人材の受入れ状況について」など、公的機関の発表データに基づく記述。
外国人介護人材の主な在留資格と特徴
介護分野で外国人が働くための主な在留資格は複数あり、それぞれ取得要件や滞在期間、転職の自由度などが異なります。企業は、採用する外国人材の状況に応じて、適切な在留資格を理解しておく必要があります。
在留資格 | 主な対象者 | 特徴・留意点 | 介護福祉士取得の義務/可能性 |
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特定技能1号 (介護) |
即戦力となる外国人材 |
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技能実習 (介護) |
母国で技能を習得した者 |
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EPA介護福祉士候補者 | 協定国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)出身者 |
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介護 (在留資格) |
日本の介護福祉士養成施設を卒業した留学生など |
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それぞれの在留資格にはメリット・デメリットがあり、施設の人材ニーズと外国人材の状況に合わせて選択する必要があります。特に、介護福祉士国家資格の取得は、長期的なキャリア形成と定着に大きく影響します。
国家資格取得の状況と支援
介護福祉士国家試験は、介護人材にとってキャリアアップの重要な指標です。外国人材にとっても、この資格の取得は長期的な日本での就労を可能にするだけでなく、給与アップや業務の幅を広げることに繋がります。
厚生労働省のデータ(※3)によると、外国人介護福祉士候補者の国家試験合格率は、年々向上傾向にあります。これは、受け入れ施設や支援機関による日本語教育・学習支援の強化が実を結んでいることを示しています。しかし、日本人受験者と比較すると依然としてギャップがあり、日本語能力や専門用語の理解が大きな壁となることが多いです。
※3:厚生労働省「介護福祉士国家試験合格者の推移(外国人)」など、公的機関の発表データに基づく記述。
資格取得支援と試験不合格時の対応
外国人材雇用の未来と課題
介護分野における外国人材の受け入れは、今後も拡大していくと予想されています。政府も、介護人材の確保策として外国人材の活用を重要な柱の一つと位置付けており、特定技能制度の拡充なども進んでいます。
しかし、その一方で、以下のような課題も存在します。
主な課題と展望
【フロー図】外国人材採用のためのステップと留意点
外国人介護人材の採用は、一般的な日本人材の採用とは異なるプロセスと専門知識が必要です。ここでは、特に特定技能制度を活用した場合の、企業が取るべき採用フローと留意点をまとめます。
上記フローは、特定技能での受け入れを主な想定としています。各ステップにおいて、出入国在留管理庁への申請や各種届出が不可欠となります。また、登録支援機関の活用は、手続きの煩雑さを軽減し、円滑な受け入れをサポートする上で非常に有効です。
外国人雇用における主な公的手続き・届出
外国人材を雇用する際には、日本人材とは異なる様々な公的手続きや届出が必要となります。これらを適切に行わない場合、不法就労助長罪に問われるなどのリスクがあるため、正確な理解と対応が求められます。
主な手続き・届出リスト
これらの手続きは複雑であり、在留資格の種類によって要件が異なるため、行政書士などの専門家や、外国人材の受け入れを支援する登録支援機関・監理団体と連携することをお勧めします。
まとめ:外国人材と共に拓く介護の未来
介護分野における外国人材は、人手不足を解消する上で不可欠な存在です。彼らの受け入れは単なる労働力確保にとどまらず、組織の多様性を高め、新たな視点をもたらす可能性を秘めています。
現状では日本語能力や資格取得の壁、受け入れ側の支援体制の課題も存在しますが、政府の推進策や支援機関の活用、そして企業自身の丁寧なサポートによって、これらの課題は克服可能です。
外国人材の採用は、単に「人が足りないから」という理由だけでなく、グローバルな視点での組織力強化と、持続可能な介護サービスの提供という未来に向けた戦略的投資です。適切なプロセスと手厚い支援で、外国人材と共に豊かな介護の未来を築きましょう。